June 14, 2013

BOROWSKY plays LISZT

アレクサンドル・ボロフスキー

BOROWSKY plays LISZT 

borowsky liszt

Disc.1
1. ハンガリー狂詩曲 第1番 S.244/1 
2. ハンガリー狂詩曲 第2番 S.244/2 
3. ハンガリー狂詩曲 第3番 S.244/3 
4. ハンガリー狂詩曲 第4番 S.244/4 
5. ハンガリー狂詩曲 第5番 S.244/5 
6. ハンガリー狂詩曲 第6番 S.244/6 
7. ハンガリー狂詩曲 第7番 S.244/7 
8. ハンガリー狂詩曲 第8番 S.244/8
9. ハンガリー狂詩曲 第9番 S.244/9 
10. ハンガリー狂詩曲 第10番 S.244/10 
11. ハンガリー狂詩曲 第11番 S.244/11 

Disc.2
1. ハンガリー狂詩曲 第12番 S.244/12
2. ハンガリー狂詩曲 第13番 S.244/13 
3. ハンガリー狂詩曲 第14番 S.244/14
4. ハンガリー狂詩曲 第15番 S.244/15
5. 泉のほとりで S.160/4 
6.-8. 協奏曲 BWV1052 (バッハ=ブゾーニ)* 
9.-11. 協奏曲 BWV1056 (バッハ)* 
12. 幻想曲とフーガ S.463 (バッハ=リスト) 

*ウジェーヌ・ビゴー指揮/ラムルー管弦楽団 

Pearl GEMM CDS 9235 
Recorded: 1935-1938 

〔メモ〕
ボロフスキーは最初は母ヴェラ・ヴェンゲーロワにピアノを学び、ペテルブルク音楽院ではアンナ・エシポワに師事します。母はサフォノフの弟子であり、エシポワはレシェティツキーの弟子で妻でもありました。つまり「レシェティツキー→サフォノフ→V.ヴェンゲーロワ→ボロフスキー」と「レシェティツキー→エシポワ→ボロフスキー」という流れがあり、ボロフスキーはレシェティツキー直系ピアニストと言えるでしょう。
19世紀のピアニストの2大流派といえば共にチェルニー門下であったリスト派とレシェティツキー派です。個人的に面白く感じるのは、「録音」というものが始まった最初期にリストのハンガリー狂詩曲を積極的に録音していたのはレシェティツキーの系譜に属するマルク・ハンブルグ、アレクサンドル・ボロフスキー、アレクサンダー・ブライロフスキーたちだということです。ハンブルグは1番~14番+ラーコーツィ行進曲普及版をHMVに、ボロフスキーは1番~15番までをポリドールに(当CD)、ブライロフスキーも1番~15番までをRCAにそれぞれ録音しています。
ハンガリー狂詩曲の演奏として、レシェティツキー派のハンブルグやリスト派のシフラと比べると、彼らが強引さやエグさのある演奏だとするならば、ボロフスキーの演奏はさらりと流れる流麗さがあります。洗練された趣味の良さをも持ち合わせています。バッハ作品も明晰で素晴らしい。

ちなみにボロフスキーは後年ハンガリー狂詩曲の完全全集(1番~19番)も録音しています。そちらはおそらくCD化されていないと思います。


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May 30, 2013

レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.91

Leslie Howard
The Complete Liszt Piano Music
新発見 3 

Disc.91
  スペインのロマンツェーロ S.695c
1. 序奏と変奏付きファンダンゴ
2. 知られざる主題の編曲
3. ホタ・アラゴネーサとコーダ 
  オラトリオ《キリスト》より2つの小品 S.498c 
4. 第1番a 序曲
5. 第1番b 田園曲
6. 第2番 奇跡 
7. マニフィカト S.182a
  3つの歌 S.510a
8. 慰め
9. 戦の前
10. 希望
11. アルバムリーフ "アンダンティーノ" S.166p
12. アルバムリーフ S.166q
13. 変奏曲 "ティサの美しき娘" S.384a 
14. かつて - ロマンス 〔第1中間稿〕 S.577ibis (ウィルホルスキー)
15. まどろみの歌 〔ラハムントのための稿〕 S.186/7a
16. 即興ワルツ 〔簡易版〕 S.213bis

Recorded: 2009 

〔メモ〕
〔1〕~〔3〕スペイン女王イザベルⅡ世への献呈も計画されていた作品だが結局出版されなかった。タイトルは「スペインの旋律集成」の意。自筆譜はゲーテ=シラー・アルヒーフにページがばらばらのまま保管されていたが、ハワードがページを集め、並べ替え、補筆し再現したもの。ホタ・アラゴネーサ(アラゴンのホタ)は「スペイン狂詩曲 S.254」(Disc.36)でもその旋律が引用されている。この作品はイギリス・リスト協会ジャーナルにて2009年に初めて公開される。 〔4〕~〔6〕オラトリオ「キリスト」のピアノ伴奏版の譜面に書かれていたピアノトランスクリプション。序曲にて単旋律聖歌「天よ、露をしたたらせ」の旋律が引用されている。他の「キリスト」関連作品はDisc.23に収録。 〔7〕「アレルヤ S.183/1」(Disc.14)の初稿。この自筆譜にリストは「無効である」と書いている。つまり出版の意図はなかった。 〔8〕~〔10〕「男声のための曲集 S.90」の第4番~第6番までのアウグスト・ホルンによるトランスクリプション。しかしハワードはこの編曲にリスト自身も関与しているのではと疑っている。仮にリスト自身による編曲であるなら、「戦士の歌 S.511」(Disc.26)の前身ということになる。そのS.511と比較するとタイトルや順番がややこしいことになっている。 〔8〕タイトルは「La consolation(慰め)」だが、S.511の第2番「臆することなかれ!」と同じ曲の編曲。S.511の第1番と第3番には「Trost!(慰め)」という別タイトルがあるが、第2番にはそのようなタイトルはない。 〔9〕タイトルは「Avant la bataille(戦の前)」だが、S.511の第1番「Vor der Schlacht(戦の前)」ではなく、第3番「神は我らを戒めり」と同じ曲の編曲。 〔10〕S.511の第1番「戦の前」と同じ曲の編曲と思われる。 〔11〕個人所有の音楽帳に書かれていた小品で、2004年にとあるオークションで出品され、それをハワードがコピーしたもの。旋律はポーランドの民俗旋律で、リストは「ヴォロニンツェの落ち穂拾い S.249」(Disc.30)の第2番「ポーランドの旋律」で使用しているものと同じ。またショパンが歌曲「願い Op.74/1」で使用した旋律と同じでもある。リストはその歌曲も編曲しているが、その「乙女の願い S.480/1」はDisc.52に収録。 〔12〕同じく2004年のオークションで出品され、ハワードがコピーしたもの。「コンソレーション 〔第1稿〕 S.171a」(Disc.26)の第6番の短縮稿のようなもの。 〔13〕リストの作品カタログ内で言及されることがしばしばあるが、リスト自身による自筆譜は残されていなく、フェレティ・パールによる写譜しか残されていない。書法は未熟であり、リストの友人による作品である可能性がある(その際にリスト自身が助言を与えたかもしれない)。 〔14〕ウィルホルスキーの「ロマンス」のリストによる編曲は第1稿と第2稿が知られていたが、その二つの稿の間に書かれた中間稿が二つ新たに判明した。第1稿はDisc.29に、第2稿はDisc.53に収録。 〔15〕曲集「クリスマスツリー」の第7番の第1稿と第2稿の中間稿。リストの弟子カール・ラハムントが所有していたもので、シャーマー社が出版するさいにラハムントが編集した。 〔16〕ペータース社が出版したもので、「即興ワルツ S.213」(Disc.20)の別人による編曲である可能性もあるが、ハワードはリスト自身によるものだと信じている。




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May 24, 2013

詩的で宗教的な調べ -幻の1845年稿-

曲集「詩的で宗教的な調べ」の初期の構想について、おおまかな解説はハワードとブルセーのCDの記事で書いたのですが、もう一度整理したいと思います。

● 「詩的で宗教的な調べ」(1834年)と「眠りから覚めた御子への祈り」(1840年?)
ラマルティーヌが「絶望に曝された限られた一部の人々へ」書いた詩集「詩的で宗教的な調べ」に自分を投影し、そのタイトルを拝借してリストが単独曲「詩的で宗教的な調べ S154」を書いたのは1834年です。この曲が同名の曲集の全ての始まりとなります。この曲を書いた数週間後にリストはマリー・ダグーへの手紙で「6曲の詩的で宗教的な調べを書く」ことを言及しています。それからしばらくの間が空き、「眠りから覚めた御子への祈り S.171c」という曲を曲集「詩的で宗教的な調べ」のために作ります。作られたのはおそらく1840年です。この曲は最終稿「眠りから覚めた御子への讃歌」となる曲です。 

● 1845年稿
1846年マリー・ダグーへの手紙でリストは「詩的で宗教的な調べは3分の2は完成した」と言及しています。この時点ですでにリストの中では「6曲の曲集」という考えは変わっていて、さらに大規模にするつもりだったそうです。ワイマールに所蔵されている「スケッチブックN5」に書かれているピアノ曲群の多くがそこへ含むつもりで書いた作品群だと思われます。同スケッチブック内にチェックリストがあり、これが曲集として構想していたものではないかと専門家は推測しています。そのチェックリストの内容は:

2. 変ホ長調
3. ハ短調
4. プロイセン皇太子のエレジー 
5. 巡礼者の行進
6. M.K.
7. ショパン 
8. 変ニ長調 
9. 子への祈り
10. 変ト長調
11. 第2ソネット (嬰ヘ長調)

まず〔1〕がありませんが、これはおそらく1834年の単独曲「詩的で宗教的な調べ S.154」になるのでしょう。
〔2〕はスケッチブックN5収録の「孤独の中の神の祝福」の初稿で、ブルセーは「前奏曲」と呼び、ハワードはS.171d/1と番号をつけたものです。
〔3〕はスケッチブックN5収録の「倦怠」のことです。
〔4〕についてですが、「プロイセン皇太子ルイ・フェルディナントの動機によるエレジー S.168」は初稿が1844年に作曲されています。おそらくこの曲でしょうか。
〔5〕ベルリオーズの「イタリアのハロルド」の「巡礼者の行進」のリストによるトランスクリプションは1830年代後半に書かれたとみられる。ハワードはおそらくこの曲のことだと思っているようです。
〔6〕スケッチブックN5の収録曲です。M.K.はマリア・カレルギスのこと。 
〔7〕何の曲を指しているのか全く不明。ショパンというタイトルの曲を作ろうとしたか?ショパン作品の編曲か?
〔8〕スケッチブックN5収録の「最後の幻影」のこと。
〔9〕おそらく1840年(?)の「眠りから覚めた御子への祈り S.171c」のこと。
〔10〕スケッチブックN5の収録曲。ハワードがS.171d/5と番号をつけたもの。
〔11〕おそらく「ペトラルカのソネット第104番」のこと。

このチェックリストはリストが曲集「詩的で宗教的な調べ」としてまとめようとしたものである可能性はありますが、個人的に言うとなんかまとまりのない曲集のように感じられます(笑)。これがフランツ・リストが1845年稿として考えていた形なら面白いですね。

● マリアの連梼の初稿(1846年) 
1846年に「マリアの連梼」の初稿が書かれています。この曲が「1845年稿に含めるために書いた」のか「1847年稿への発端」となったのかはわかりません。

関連記事: レスリー・ハワード: リストピアノ作品全集 Disc.90 
関連記事: Harmonies poetiques et religieuses (early versions) 


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May 12, 2013

Harmonies poetiques et religieuses (early versions)

アルベルト・ブルセー 

Harmonies poetiques et religieuses (early versions) 

brussee harmonies 1834

  詩的で宗教的な調べ 〔初期稿〕
1. 詩的で宗教的な調べ S.154 
2. 眠りから覚めた御子への讃歌 〔第1稿〕 S.171c
3. 前奏曲 S.171d/1 
4. 倦怠 S.171d/2
5. 皇太子L.F.の音楽に S.171d/3 
6. 最後の幻影 S.171d/4-5 
7. 心せよ S.171d/6 
8. M.K. S.171d/8 
9. マリアの連梼 〔第1稿〕 S.171e 

AB I-04 
Recorded: 2000

〔メモ〕
曲集「詩的で宗教的な調べ」といえば、最終稿のS.173とその前身である1847年稿の172aが知られているが、ここでのブルセーはそれより以前の「詩的で宗教的な調べ」の初期の構想を、自身の見識に基づいて再現したもの。トラック〔4〕から〔8〕まで世界初録音と思われる。 〔1〕「詩的で宗教的な調べ」というタイトルで言及された初めての作品で、「死者の追憶」の初稿。1834年作曲。ラマルティーヌの詩集「詩的で宗教的な調べ」に触発されて作ったもので、ラマルティーヌへ献呈している。 〔2〕「眠りから覚めた御子への讃歌 S.173/6」の初稿。最も初期の構想では「6曲の詩的で宗教的な調べを作る」とリスト本人はマリー・ダグーへの手紙の中で言及している。その6曲とはどの曲を指しているかはわからないが、トラック〔1〕のS.154と当トラックS.171cは含まれていると思われる。ゲーテ=シラー・アルヒーフに所蔵されている自筆譜に「フォンテーヌブロー - 10月8日」と書いてある。この時点でリストが付けたタイトルは「眠りから覚めた御子への祈り」(ちなみにハワードはこちらを採用している)。 〔3〕「孤独の中の神の祝福 S.173/3」の初稿。上で述べたように最初期の構想でリストは「6曲」を作る予定だったが、その数年後のマリー・ダグーへの手紙では「200ページほどの曲集となる」と本人は言及している。この「200ページほどの曲集」に含めようと書いた作品群が当ディスクのトラック〔3〕から〔8〕であり、これらはワイマールのゲーテ=シラー・アルヒーフにて「スケッチブックN5」と呼ばれる自筆譜に収録されている。 〔4〕ブルセーによると、テオドール・ケルナーの詩「プロイセン皇太子ルイ・フェルディナントの音楽に」に触発されて書かれた作品。1845年に着手。 〔5〕同じくケルナーの詩に触発されたもの。リストの作品「ルイ・フェルディナントの動機によるエレジー S.168」とは別の曲だが、ブルセーは「漂う雰囲気は似ている」と指摘している。 〔6〕後に「バラード 第1番 S.170」などに旋律が転用される作品。「écrit pour Marie(マリーのために書いた)」と書かれているが、これはもちろんマリー・ダグーのこと。ハワードはこの「最後の幻影」の次に書かれている譜面を別の曲としたが、ブルセーはその譜面も「最後の幻影」の続きと判断し1つの曲として演奏している。 〔7〕タイトル「Attente」は聖書の中のパウロの手紙などによく出てくる単語で、「心を構えよ」という意味。終結部が欠落しているためブルセーが補筆した。 〔8〕「M.K.」とはリストやショパンの友人であったマリア・カレルギスのこと。譜面は不完全な形だったのでブルセーが編集して演奏できる状態にした。 〔9〕上記トラック〔3〕~〔8〕は同じ曲集へ含めようと意図されて書かれたものである可能性が高いが、この1846年に書かれた「マリアの連梼」の初稿はリストがそこへ含めようと思ったかどうかはわからない。しかし1847年の11曲の曲集「詩的で宗教的な調べ S.172a」には「マリアの連梼」の改訂稿が収録されているため、この初稿もその前身となる曲集へ含める意図があったかもしれない。自筆譜はワイマールのゲーテ=シラー・アルヒーフに所蔵(ただしスケッチブックN5にではない)。

関連記事: Harmonies poetiques et religieuses (1847 version)  


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April 28, 2013

レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.90

Leslie Howard
The Complete Liszt Piano Music
新発見 2 

Disc.90 
  詩的で宗教的な前奏と調べ 〔補筆:ハワード〕 S.171d
1. 第1番 
2. 第2番 "倦怠?" 
3. 第3番 
4. 第4番 "- 最後の幻影(?)" 
5. 第5番
6. 第6番 "心せよ" 
7. 第7番 "代わり" 
8. 第8番 "M.K." 
9. 管弦楽の無い協奏曲 S.524a
10. アルバムリーフ "マジャール" S.164e/2 
11. ハンガリー行進曲 S.229a 
12. 思想 "夜想曲" S.168b 
13. アルバムリーフ S.164h
14. アルバムリーフ "前奏曲" S.164j 
15. アルバムリーフ S.166l 
16. アルバムリーフ S.167h
17. おお、愛しうるかぎり愛せ 〔補筆:ハワード〕 S.540b 

Recorded: 2003 

〔メモ〕
〔1〕~〔8〕ワイマールのゲーテ=シラー・アルヒーフに所蔵されている「スケッチブックN5」に草稿が残されている作品群で、リスト本人は「詩的で宗教的な調べ (詩的で宗教的な前奏と調べ)」という風に書いていて、ハワードはそのカッコ内をタイトルとして採用している。演奏ができない未完成な作品もある。オランダのピアニスト、ピアノ教育家アルベルト・ブルセーがこの曲集を再現し、出版・録音をした。ハワードも自身の見解に基づいて再現した結果、ブルセーのものとは異なるものが出来あがった。ちなみに音楽学者レナ・チャーニン・ミュラーは、交響詩タッソーの短い草稿が収録されていることから、このスケッチブックを「タッソー・スケッチブック」と呼んでいる。曲集タイトルを見るとS.173の曲集「詩的で宗教的な調べ」と関連があるように見えるが、実際直接的な関連があるのは第1曲のみ。そもそもリストがこの曲集を最終的にどのような形(収録曲、曲数など)にしようとしていたかなどの詳細不明。 〔1〕「孤独の中の神の祝福 S.173/3」(Disc.13)の初稿。本来は無題。ハワードはDisc.15においてもこの曲を録音しているので、2度目の録音となる。ちなみにその時は「前奏曲」というタイトルを付けていた。草稿には「ナンシー、1845年11月16日」と書かれている。 〔2〕タイトルらしいものとして自筆で「Langueur?」と書かれている(クエスチョンマークも込みで)。日付は「1845年11月20日」。 〔3〕無題。日付は「1845年12月4日」。 〔4〕後に「バラード 第1番 S.170」(Disc.12)に主題が転用される。そして他の主題も変形されて「コンソレーション 第6番 S.172/6」(Disc.17)に転用されている。タイトルに付いているクエスチョンマークもリスト自身によるもの。終結部が無く、ハワードが補筆している。 〔5〕無題。日付は「1845年12月6日」。リストが宗教的、天上的作品を書く際の典型的な書法が見える。 〔6〕「心せよ」というタイトルが付けられている。この「心せよ」というタイトルは第4番(当ディスク・トラック〔4〕)にも下書きとして書かれている。終結部が無く、ハワードがリスト自身による他の似たような音素材を使用して補筆している。 〔7〕「代わり」と書かれているが、第6番の代わりとして書かれた可能性もあるが詳細は不明。旋律は後に歌曲「我死せり S.308」の旋律に使用される。つまりピアノ独奏曲「愛の夢 第2番 S.541/2」(Disc.24)と同じ旋律を持つ。 〔8〕「M.K.」とはリストの友人であったマリア・カレルギスのこと。ごく一部の下書きが残されているだけで、大部分をハワードが補筆した。 〔9〕「ピアノ協奏曲 第2番 S.125」の初期の草稿で、この時点ではとりあえずピアノ独奏として書かれている(ただしリストはピアノ独奏曲の譜面においても他の楽器挿入をほのめかす書き込みをすることがあり、この曲にも書かれている)。本来は無題だが、上記タイトルはシューマンに倣ってハワードが付けたもの。関連作品「アルバムリーフ S.163a/1」はDisc.89に収録。 〔10〕モシェレスのために書かれた小品。「マジャールの歌 第11番 S.242/11」(Disc.31)の旋律が使用されている。この旋律は「ハンガリー狂詩曲 第3番 S.244/3」でも使用されている。 〔11〕詳細不明の未出版の小品。 〔12〕上記の曲集「詩的で宗教的な前奏と調べ S.171d」と同じくスケッチブックN5に書かれている小品。リストはどうやら「思想」というタイトルの作品をいくつか作ろうとしていた形跡があるが、この1曲しか見つかっていない。1845年11月6日に書かれた。 〔13〕ゲーテ=シラー・アルヒーフに所蔵されている小品。リスト少年期の作品である可能性がある。譜面上に「L」と「D」が重なり合って書いてあるが、これは「Laus Deo (神を称えよ)」を意味している。 〔14〕「アルバムリーフ - リヨン前奏曲 S.166d/1」(Disc.86)の類似作品。曲というよりは指の運動のためのパッセージのようなもの。 〔15〕対位法が特徴的な小品。ゲーテ=シラー・アルヒーフに所蔵されている。 〔16〕音楽の遊び。右手は常に同じ和音を奏でるが、左手の旋律の動きによりその和音は異名同音となる。 〔17〕「愛の夢 第3番 S.541/3」(Disc.24)の初期稿。最終稿は変イ長調だがこちらはイ長調。ゲーテ=シラー・アルヒーフに所蔵されている未完の自筆譜。「ピアノ独奏最終稿」と「歌曲「おお、愛しうるかぎり愛せ S.298」のピアノパート」をイ長調へ移し、それを素材としてハワードが欠落部分を補筆したもの。




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April 17, 2013

リストのややこしい事1 -アヴェ・マリア編-

フランツ・リストの作品(またその人生も)はややこしい事が多いです。リストのややこしい事をまとめて、少しでもわかりやすいようにしてみようと思います。

まず第1弾はアヴェ・マリアです。アヴェ・マリアと言えばシューベルトの歌曲やバッハの曲をグノーが編曲した歌曲が有名ですが、リストもいくつかアヴェ・マリアという曲を書いています。ここではピアノ独奏曲をまとめてみたいと思います。

● S.173/2 詩的で宗教的な調べ 第2番 アヴェ・マリア 
リストの代表的な曲集の一つと言える「詩的で宗教的な調べ」ですが、その第2曲がアヴェ・マリアというタイトルです。もともとは合唱曲ですが、それをピアノ独奏編曲したものです。チッコリーニの名演が心に響きます。
区別できるように呼称するなら「詩的で宗教的な調べのアヴェ・マリア」か「変ロ長調のアヴェ・マリア」でしょうか。

● S.182 アヴェ・マリア - ローマの鐘 
オリジナルのピアノ独奏曲。レーベルトとシュタルクによるピアノ教本「大ピアノ教程」のために作曲されたものです。あまり演奏される機会はありませんが、リヒテルやハフの録音があります。
区別するための呼称は「ローマの鐘」(これは副題です)か「ホ長調のアヴェ・マリア」ではないでしょうか。

● S.183/2 アルカデルトのアヴェ・マリア 
アルカデルトの曲を編曲したもの・・・と思いきや、この原曲は別人がアルカデルトの作風を模倣してでっち上げたもの。それをリストがピアノ独奏編曲したもの。
区別するための呼称は「アルカデルトのアヴェ・マリア」か「ヘ長調のアヴェ・マリア」とかでしょうか。

● S.504 アヴェ・マリア (Ⅱ) 
フランツ・リストによるモテット「アヴェ・マリアⅡ S.38」をピアノ独奏曲へ編曲したもの。第1稿と第2稿のふたつのバージョンがあり、第1稿はニ長調、第2稿は変ニ長調です。
区別するための呼称は「アヴェ・マリアⅡ」ですかね(Ⅱは「に」でも「ツー」でも「ツヴァイ」でもご自由に)。

● S.545 アヴェ・マリア (Ⅳ) 
フランツ・リストによる歌曲「アヴェ・マリアⅣ S.341」のピアノ独奏編曲です。ルディやハフの録音があります。
呼称は「アヴェ・マリアⅣ」か「ト長調のアヴェ・マリア」でしょうか(同じくⅣは「よん」でも「フォー」でも「フィア」でもご自由に)。

● S.558/12 アヴェ・マリア (シューベルト=リスト) 
ご存じのようにシューベルトの有名な歌曲「アヴェ・マリア (エレンの歌 第3番) D.839」をリストがピアノ独奏編曲したもの。編曲は第1稿(S.557d)と第2稿(S.558/12)のふたつのバージョンがあります。ベルマンによる感動的な名演があります。
呼称はそのまま「シューベルトのアヴェ・マリア」でいいでしょう。

関連記事: リストのややこしいこと2 -悲しみのゴンドラ編-  


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March 28, 2013

FERENC LISZT

ヴラディーミル・アシュケナージ
ラザール・ベルマン
ヴラディーミル・オフチニコフ
グレブ・アクセルロート
アレクサンドル・スロボジャニク
パーヴェル・セレブリャコフ 

FERENC LISZT 

melodiya liszt







Disc.1
1. メフィストワルツ 第1番 S.514*
2. タランテラ S.162/3"
3. 回想 S.139/9#
4. ハンガリー狂詩曲 第2番 S.244/2$
5. ハンガリー狂詩曲 第6番 S.244/6!
6. ピアノソナタ S.178!

*ヴラディーミル・アシュケナージ
"ラザール・ベルマン
#ヴラディーミル・オフチニコフ
$グレブ・アクセルロート
!アレクサンドル・スロボジャニク 

Disc.2
1. ピアノ協奏曲 S.124*
2. 前奏曲 S.97"
3. タッソー、悲劇と勝利 S.96#
4. オルフェウス S.98#
5. プロメテウス S.99#

*パーヴェル・セレブリャコフ(p)、キリル・コンドラシン指揮/モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団
"ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮/モスクワ放送交響楽団
#マルク・エルムレル指揮/ソヴィエト国立文化省交響楽団 

Melodiya MEL CD 1001911
Recorded: 1959-1989 

〔メモ〕 
元ロシア国営企業だったメロディアレーベルが2011年にフランツ・リストの生誕200年を記念してリリースしたCDです。日本に入って来たのはなぜか2012年になるかならないかぐらいの時でした。膨大な録音を有するメロディアですからCD2枚とは言わず大規模なボックスで出して欲しかったというのが本音ですが、演奏の方はさすがロシアの名演奏家たちによるもので素晴らしいです。CD時代が終わろうというこの時期に今までCDのリリースに積極的でなかったメロディアがリリースを始めたというのは面白いし、個人的には嬉しいことです。
ピアニストに目を向けるとDisc.1の方は全てモスクワ音楽院出身者たちで、モスクワ音楽院の偉大な教授たちであるイグムノフ、ゴリデンヴェイゼル、ネイガウスの系譜のどれかにそれぞれ属しています。一方Disc.2のセレブリャコフはレニングラード音楽院(現ペテルブルク音楽院)出身で、名教授ニコラーエフの門下です。そのセレブリャコフのピアノ協奏曲は非常に端整な出来栄えで、実力派としての腕を発揮した会心の録音です。

ちなみにスロボジャニクはこの録音で1976年にフランツ・リスト賞をハンガリーで受賞しているとのことです。

最後にブックレットに芸術評論家ヴラディーミル・スターソフの言葉が掲載されていますので、引用したいと思います。「もしリストがいなければ、音楽のさだめは別のものになっていただろう」

フランツ・リスト→アレクサンドル・ジロティ→コンスタンティン・イグムノフ→レフ・オボーリン→ヴラディーミル・アシュケナージ 
フランツ・リスト→アレクサンドル・ジロティ→アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼル→ラザール・ベルマン 
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→アレクセイ・ナセトキン→ヴラディーミル・オフチニコフ 
フランツ・リスト→アレクサンドル・ジロティ→アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼル→グリゴリー・ギンズブルグ→グレブ・アクセルロート 
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→ヴェラ・ゴルノスタエワ→アレクサンドル・スロボジャニク


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ミッチ at 03:39|PermalinkComments(2)TrackBack(0) リストのCD紹介 

March 06, 2013

世界の偉大なるピアノ音楽 -インデックス-

The Great Piano Music of the World

第1巻 ベートーヴェン1
 
第2巻 ベートーヴェン2 
第3巻 ベートーヴェン3 
第4巻 ベートーヴェン4 
第5巻 ベートーヴェン5 
第6巻 ベートーヴェン6 
第7巻 ベートーヴェン7 
第8巻 ベートーヴェン8 
第9巻 ベートーヴェン9 
第10巻 ベートーヴェン10 
第11巻 モーツァルト1 
第12巻 モーツァルト2 
第13巻 モーツァルト3 
第14巻 モーツァルト4 
第15巻 モーツァルト5 
第16巻 バッハ1 
第17巻 バッハ2 
第18巻 バッハ3 
第19巻 バッハ4 
第20巻 ショパン1 
第21巻 ショパン2 
第22巻 ショパン3 
第23巻 ショパン4 
第24巻 ショパン5 
第25巻 ショパン6 
第26巻 ショパン7 
第27巻 ショパン8 
第28巻 ショパン9 
第29巻 ショパン10 
第30巻 ショパン11 
第31巻 リスト1 
第32巻 リスト2 
第33巻 リスト3 
第34巻 リスト4 
第35巻 リスト5 
第36巻 リスト6 
第37巻 リスト7 
第38巻 リスト8 
第39巻 シューベルト1
第40巻 シューベルト2 
第41巻 シューベルト3 
第42巻 シューベルト4 
第43巻 メンデルスゾーン1   
第44巻 メンデルスゾーン2 
第45巻 メンデルスゾーン3 
第46巻 ウェーバー 
第47巻 ルビンシテイン 
第48巻 ムソルグスキー 
第49巻 チャイコフスキー1 
第50巻 チャイコフスキー2 
第51巻 チャイコフスキー3 
第52巻 スカルラッティ1 
第53巻 スカルラッティ2 
第54巻 ハイドン1 
第55巻 ハイドン2 
第56巻 スクリャービン1 
第57巻 スクリャービン2 
第58巻 スクリャービン3 
第59巻 スクリャービン4 
第60巻 スクリャービン5 
第61巻 シューマン1 
第62巻 シューマン2 
第63巻 シューマン3 
第64巻 シューマン4 
第65巻 シューマン5 
第66巻 シューマン6 
第67巻 シューマン7 
第68巻 ブラームス1 
第69巻 ブラームス2 
第70巻 ブラームス3 
第71巻 ブラームス4 
第72巻 ブラームス5 
第73巻 ブラームス6 
第74巻 ブラームス7 
第75巻 ドヴォルザーク 
第76巻 サン=サーンス 
第77巻 グリーグ 
第78巻 フォーレ 
第79巻 ラフマニノフ1 
第80巻 ラフマニノフ2 
第81巻 ラフマニノフ3 
第82巻 ラフマニノフ4 
第83巻 ラフマニノフ5 
第84巻 ドビュッシー1 
第85巻 ドビュッシー2 
第86巻 ドビュッシー3 
第87巻 ラヴェル 
第88巻 ??? 
第89巻 バルトーク1 
第90巻 バルトーク2 
世界の偉大なるピアノ音楽 -後記- 


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February 16, 2013

レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.89

Leslie Howard
The Complete Liszt Piano Music
新発見 1 

Disc.89 
  マリー・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン嬢のアルバムより
1. アルバムリーフ "喜びに満ち、悲しみに満ち" S.166n 
2. リリー S.166m/1
3. ハルヤ S.166m/2
4. マズルカ S.166m/3
5. クラコヴィアク S.166m/4 
  ジプシーの叙事詩 S.695b
6. 第1番
7. 第2番
8. 第3番
9. 第4番
10. 第5番
11. 第6番
12. 第7番 "ラーコーツィ行進曲"  
13. 第8番
14. 第9番
15. 第10番
16. 第11番 
17. ハンガリーの有名な旋律 S.243a
18. 守護天使へ 〔第1草稿修正版〕 S.162a/1bis
19. ものみな涙あり - ハンガリー旋法で 〔中間稿〕 S.162c/ii
20. 後奏曲 - スルスム・コルダ! 〔第1稿〕 S.162e 
21. 悲しみのゴンドラ 〔ヴェネツィア第1草稿〕 S.199a
22. アルバムリーフ S.163a/1
23. アルバムリーフ "フリシュカ" S.166k
24. アルバムリーフ "ダンテ交響曲の和声進行" S.167f 

Recorded: 2001 

〔メモ〕
〔1〕~〔5〕カロリーネ・ザイン=ヴィトゲンシュタインの娘マリー・ザイン=ヴィトゲンシュタインへ捧げられた音楽帳に収録されていた小品。このアルバムには44の音楽家による作品が収録されているが、その最初の5曲がフランツ・リストによるもの。このアルバムはかつて個人所有であり、未公開の状態だったが1999年にオークションに出品され、ゲーテ=シラー・アルヒーフが落札した。2000年にムジカ・ブダペスト社が初版した。 〔1〕この曲のみ元々カロリーネの母であるイワノフスカ夫人へ献呈されたもので、それをこのアルバムへ後から挿入した。曲自体はゲーテの詩によるリストの歌曲「喜びに満ち、悲しみに満ち S.280」を基にしたピアノ小品。 〔2〕ポーランド民謡を基にしたもの。 〔3〕ポーランド民謡を基にした小品。この旋律は「ヴォロニンツェの落ち穂拾い S.249」(Disc.30)の第1曲「ウクライナのバラード」でも使用されている。 〔4〕ポーランド民謡を基にしたもの。 〔5〕ポーランド民謡を基にしたもの。 〔6〕~〔16〕「マジャールの歌とマジャール狂詩曲 S.242」(Disc.31, Disc.32)の素材を転用して、簡素化し一新した曲集を作ろうとしたが頓挫したもの。当然同曲を前身とする「ハンガリー狂詩曲 S.244」(Disc.33, Disc.34)とも関連が深い。リスト本人による正式名称は「ジプシーの叙事詩、マジャールの歌とマジャール狂詩曲の普及版」。全何曲になる構想だったのかは不明。全ての譜面が書かれたわけではなく、例えば「~番はマジャールの歌~番と同一」や「~番の~小節はマジャール狂詩曲~番の~小節から転用」のように番号が示されているだけの場合が多い。そのようなリストの指示を汲み取りながら、ハワードが11曲を演奏可能な状態にした。 〔6〕「マジャールの歌 第1番 S.242/1」と同一。 〔7〕「マジャールの歌 第2番 S.242/1」と同一。 〔8〕「マジャールの歌 第3番 S.242/3」を基にしているが、後半は改訂されている。 〔9〕「マジャールの歌 第4番 S.242/4」と同一。簡易オッシアがある部分はそれを演奏している。 〔10〕「マジャールの歌 第5番 S.242/5」と同一。 〔11〕「マジャールの歌 第6番 S.242/6」と「マジャール狂詩曲 第12番 悲劇的な英雄の詩 S.242/12」を混合したもの。 〔12〕「マジャール狂詩曲 第13番 - ラーコーツィ行進曲 S.242/13」を挿入するようにというリストの指示がある。マジャール狂詩曲13番は2つの稿(通常稿S.242/13と簡易稿S.242/13a)があり、ハワードは簡易稿を挿入する方がふさわしいと判断し、そちらを演奏している。 〔13〕「マジャールの歌 第10番 S.242/10」を基にして数小節変更したもの。 〔14〕「マジャールの歌 第7番 S.242/7」を基にして数小節変更したもの。 〔15〕「マジャールの歌 第8番 S.242/8」を基にして数小節変更したもの。 〔16〕「マジャールの歌 第9番 S.242/9」を基にして数小節変更したもの。 〔17〕「マジャールの歌 第11番 S.242/11」の後半部をフランシス・プランテのために改訂したもの。「ハンガリー狂詩曲 第6番 S.244/6」(Disc.33)の素材となる。 〔18〕「巡礼の年 第3年 S.163」(Disc.11)の第1曲「アンジェルス!」の第1草稿の修正版。孫娘ダニエラ・フォン・ビューローへの献呈も記載されている。基となった第1草稿はDisc.82に収録。 〔19〕「巡礼の年 第3年 S.163」(Disc.11)の第5曲「ものみな涙あり」の初稿にいくつかの改訂を加えたもの。基となった初稿はDisc.83に収録。 〔20〕「巡礼の年 第3年 S.163」(Disc.11)の第7曲「スルスム・コルダ」の初稿。 〔21〕1882年にヴェネツィアのワーグナーをリストが訪ねた際に作曲されたもの。悲しみのゴンドラの初稿。このヴェネツィア草稿は2002年にルッジネンティ社により初版された。後に改訂され「悲しみのゴンドラⅡ S.200/2」となる。改訂稿「悲しみのゴンドラⅡ S.200/2」とその派生作品「悲しみのゴンドラⅠ S.200/1」はDisc.19に収録。 〔22〕2000年にサザビーのオークションで出品されたもの。譜面にはリストの自筆で「3 avril 1828」(1828年4月3日)と書かれている。「ピアノ協奏曲 第2番 S.125」のスケッチにて素材として使用され、変形はしているものの最終稿にもその名残が見られる。 〔23〕ゲーテ=シラー・アルヒーフに所蔵されている詳細不明の草稿。ハワードは1840年代に書かれたものと推測している。 〔24〕「ダンテ交響曲 S.109」のマニフィカート終盤におけるコード進行の抜粋。全音音階が特徴的。この断片はボストン大学に所蔵されている。 




HMV : レスリー・ハワード リスト ピアノ作品全集
タワレコ : レスリー・ハワード リスト ピアノ作品全集 


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February 14, 2013

世界の偉大なるピアノ音楽 -後記-

CDシリーズ「The Great Piano Music of the World」の紹介を終わりにしたいと思います。最後にこのシリーズについて簡単に説明したいと思います。

● レーベル: Melodiya/Bukok
メロディアレーベルの音源を使用して、韓国の会社が企画・制作したものです。「ロシア・ピアニズム」の著者である佐藤泰一さんによるとこのシリーズは教育用に作られたとのことです。よって韓国では一般販売はされていないとこのです。巻数は全90巻です。 

● 盗用問題 
このシリーズではやはりこの問題に触れないわけにはいかないでしょう。フランツ・リストの巻においてクズミンの演奏と表記されているほとんどの録音は、ミシェル・ダルベルトが日本のDenonレーベルへ録音したものを無断で使用しているものです。はっきりと盗用していると判明しているのはクズミンだけですが、他にも「このピアニストがあの曲を録音してるんだろうか?」という観点で見ると怪しいものがいくつもあります。佐藤泰一さんも「内容はなんとも理解しがたい」と言い、その真偽を疑っているようなことをその著書に書いています(しかし8割以上は本物です)。この問題が騒がれていないのは、おそらくこのシリーズが正規販売されてないものだからだと思います。盗用とは関係ありませんが、表記がいい加減だったりブックレットに解説が一切なかったりと、仕様もいい加減です。そうは言っても貴重な音源もありますので、ピアノ愛好家には注目のシリーズであることは事実です。

● 第88巻/第89巻 
残念ながら第88巻と第89巻は発見することができなかったので、全巻紹介とはいきませんでした。ロシアのピアニストのディスコグラフィーを参照すると第89巻(DE 0209)はバルトークのミクロコスモスが収録されているらしく、演奏者はマリア・グリンベルグとマリア・ユージナだそうです。第88巻にいたっては内容すらわかりません。第87巻のラヴェルで、彼の代表曲といえる「夜のガスパール」や「水の戯れ」が収録されていないことから推測するに、第87巻はラヴェル集なのではと思います(が、ご存じの方がいらっしゃいましたらご教示ください)。

なにはともあれ「20世紀の偉大なるピアニストたち」シリーズやこの「世界の偉大なるピアノ音楽」シリーズのような大規模なピアノCDの企画は大歓迎です。どこかこういう企画をまたやってくれることを期待しています。


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