Harmonies poetiques et religieuses (early versions)レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.91

May 24, 2013

詩的で宗教的な調べ -幻の1845年稿-

曲集「詩的で宗教的な調べ」の初期の構想について、おおまかな解説はハワードとブルセーのCDの記事で書いたのですが、もう一度整理したいと思います。

● 「詩的で宗教的な調べ」(1834年)と「眠りから覚めた御子への祈り」(1840年?)
ラマルティーヌが「絶望に曝された限られた一部の人々へ」書いた詩集「詩的で宗教的な調べ」に自分を投影し、そのタイトルを拝借してリストが単独曲「詩的で宗教的な調べ S154」を書いたのは1834年です。この曲が同名の曲集の全ての始まりとなります。この曲を書いた数週間後にリストはマリー・ダグーへの手紙で「6曲の詩的で宗教的な調べを書く」ことを言及しています。それからしばらくの間が空き、「眠りから覚めた御子への祈り S.171c」という曲を曲集「詩的で宗教的な調べ」のために作ります。作られたのはおそらく1840年です。この曲は最終稿「眠りから覚めた御子への讃歌」となる曲です。 

● 1845年稿
1846年マリー・ダグーへの手紙でリストは「詩的で宗教的な調べは3分の2は完成した」と言及しています。この時点ですでにリストの中では「6曲の曲集」という考えは変わっていて、さらに大規模にするつもりだったそうです。ワイマールに所蔵されている「スケッチブックN5」に書かれているピアノ曲群の多くがそこへ含むつもりで書いた作品群だと思われます。同スケッチブック内にチェックリストがあり、これが曲集として構想していたものではないかと専門家は推測しています。そのチェックリストの内容は:

2. 変ホ長調
3. ハ短調
4. プロイセン皇太子のエレジー 
5. 巡礼者の行進
6. M.K.
7. ショパン 
8. 変ニ長調 
9. 子への祈り
10. 変ト長調
11. 第2ソネット (嬰ヘ長調)

まず〔1〕がありませんが、これはおそらく1834年の単独曲「詩的で宗教的な調べ S.154」になるのでしょう。
〔2〕はスケッチブックN5収録の「孤独の中の神の祝福」の初稿で、ブルセーは「前奏曲」と呼び、ハワードはS.171d/1と番号をつけたものです。
〔3〕はスケッチブックN5収録の「倦怠」のことです。
〔4〕についてですが、「プロイセン皇太子ルイ・フェルディナントの動機によるエレジー S.168」は初稿が1844年に作曲されています。おそらくこの曲でしょうか。
〔5〕ベルリオーズの「イタリアのハロルド」の「巡礼者の行進」のリストによるトランスクリプションは1830年代後半に書かれたとみられる。ハワードはおそらくこの曲のことだと思っているようです。
〔6〕スケッチブックN5の収録曲です。M.K.はマリア・カレルギスのこと。 
〔7〕何の曲を指しているのか全く不明。ショパンというタイトルの曲を作ろうとしたか?ショパン作品の編曲か?
〔8〕スケッチブックN5収録の「最後の幻影」のこと。
〔9〕おそらく1840年(?)の「眠りから覚めた御子への祈り S.171c」のこと。
〔10〕スケッチブックN5の収録曲。ハワードがS.171d/5と番号をつけたもの。
〔11〕おそらく「ペトラルカのソネット第104番」のこと。

このチェックリストはリストが曲集「詩的で宗教的な調べ」としてまとめようとしたものである可能性はありますが、個人的に言うとなんかまとまりのない曲集のように感じられます(笑)。これがフランツ・リストが1845年稿として考えていた形なら面白いですね。

● マリアの連梼の初稿(1846年) 
1846年に「マリアの連梼」の初稿が書かれています。この曲が「1845年稿に含めるために書いた」のか「1847年稿への発端」となったのかはわかりません。

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この記事へのコメント

1. Posted by yoshimi   May 25, 2013 11:39
こんにちは。
1845年稿の構想は、最終稿と全然違っているところが面白いですね。
「まとまりのない曲集」というのは、おっしゃる通りです。《詩的で宗教的な調べ》という曲集名の格調高いイメージとは、あまり合っていないような...。
「ショパン」「プロイセン皇太子のエレジー」「巡礼者の行進」という曲名を見ると、私はなぜかシューマンの《謝肉祭》を連想してしまいました。
「ペトラルカのソネット第104番」は《巡礼の年》のなかでも好きな曲の一つです。最初はこれに入っていたのですね。

そういえば、村上春樹の例の最新作にも「ペトラルカのソネット」がちょっとだけ出てくるようです。第104番ではなくて、第47番の方らしいです。(まだ読んでないので確認してはいませんが)
ベルマンの「巡礼の年」が、CD・ダウンロードとも良く売れているそうなので、さすがに村上作品の影響力は絶大なものがあります。
2. Posted by ミッチ   May 25, 2013 21:26
こんばんは!

「ショパン」に関しては「タイトル的にはシューマンの謝肉祭に感化されたか」と、ハワードも全く同じ指摘をしています。

やはり曲集としてはまとまりが悪いですよね(笑)。リストが何の意図をもってこのチェックリストを書いたのか謎です。

この2年後に作られる曲集「詩的で宗教的な調べ〔1847年稿〕」とは3曲しか共通の曲を持たないのも不思議です。

おそらくリスト本人の中でははっきりとした形が定まらず、ずっとぼやけた形で頭の中で構想を練ってたのではないかと個人的には思います。

おお、ベルマンのCDがよく売れているのですね!このような名盤が普及してくれるのは、リストファンとして嬉しいです。
3. Posted by klavier   May 26, 2013 17:23
貴重な記事をありがとうございます。ラマルティーヌという人の詩集の影響、そして最終稿に至るまで、このような経緯の変遷があったのですね!

経緯からみると特に、色々と謎な部分もある曲集のようですが、大好きな曲集なだけに、ますます探求心が募ってしまいます。そして、色々とリストの事を思いめぐらせるのもまた、楽しいですね。
4. Posted by ミッチ   May 27, 2013 06:43
おはようございます!

拙い文章ですが、記事を楽しんでいただけたようでよかったです。

僕がリストに惹かれる理由のひとつが「謎が多い」という点です。謎が多い方が好奇心をそそられます(笑)。

これら初期の構想を見ていると、最終稿があのような形になったのが不思議で面白いですね。あまりにもかけ離れているので。

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