JOHN OGDON: Legendary British Virtuosoリストのややこしい事3 -子守歌編-

September 20, 2013

レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.96

Leslie Howard
The Complete Liszt Piano Music
ピアノと管弦楽のための作品 2 

Disc.96 
1.-4. ピアノと弦楽のための協奏曲 "呪い" S.121* 
5.-9. 協奏曲 (変ホ長調) 〔ローゼンブラット校正/ハワード再校正〕S.125a*
10.-13. 演奏会用大独奏曲 〔ハワード校正〕 S.365*
  へクサメロン - 演奏会用小品 "ベルリーニの《清教徒》の行進曲による華麗なる大変奏曲" 〔オーケストレーション:一部ハワード〕 S.365a*
14. 序奏 (リスト)
15. 主題 (ベルリーニ=リスト)
16. 第1変奏 (タールベルク)
17. 第2変奏 (リスト) 
18. 華麗なる第3変奏 (ピクシス&リスト) 
19. リトルネッロ (リスト) 
20. 第4変奏 (エルツ&リスト) 
21. 第5変奏 (チェルニー)
22. 第1間奏 (リスト) 
23. 第6変奏 (ショパン) 
24. 第2間奏 (リスト) 
25.-26. フィナーレ (リスト) 
27.-28. 華麗なるポロネーズ S.367 (ウェーバー)* 

*カール・アントン・リッケンバッヒャー指揮/ブダペスト交響楽団 

Hyperion CDA67401/2
Recorded: 1997/1998 

〔メモ〕 
〔1〕~〔4〕ピアノと弦楽のみという珍しい編成のための単一楽章の協奏曲。通称「呪い」と呼ばれるが、リスト自身が序盤の主題をそう呼んだからそのような通称で呼ばれるようになった。その序盤の主題は「嵐 S.160/5」(Disc.9)の序盤の主題との類似性を指摘されている。また中盤では「忘れられたワルツ 第3番 S.215/3」(Disc.20)と似通った旋律も聞かれる。 〔5〕~〔9〕リストが出版せずにお蔵入りにしたピアノ協奏曲で第1、第2番と同様に単一楽章。この作品の自筆譜は以前は「ピアノ協奏曲 第1番 S.126」のために書かれた初期の譜面の一部だと誤解されていたが、ジェイ・ローゼンブラット教授が別の作品だと断定したもの。通称「ピアノ協奏曲 第3番」と呼ばれている。この作品の譜面を再現するためにローゼンブラット教授はモスクワ、ワイマール、ニュルンベルクに散らばっていた自筆譜をかき集め、さらに写譜家による写譜も使用して再現した。ハワードは編集が不自然な部分もあると判断し、自ら再編集している部分もある。初期のピアノ作品「8つの変奏曲 S.148」「華麗なるアレグロ S.151」「華麗なるロンド S.152」の主題が転用されている。これら関連作品はDisc.1に収録。 〔10〕~〔13〕後にピアノ独奏曲「演奏会用大独奏曲 S.176」や2台ピアノの作品「悲愴協奏曲 S.258」となる作品の初期の草稿「ピアノ独奏稿」と「ピアノ独奏パートの書いていない協奏稿」を編集してピアノ協奏稿としてハワードが作り上げたもの。ハンフリー・サールも同じような試みをしたが、ハワードに言わせれば「恣意的な改編に満たされたもの」らしい。ちなみに「ピアノ独奏パートの書いていない協奏稿」の草稿の所有者は現ロンドンデリー侯爵。関連作品「演奏会用大独奏曲 S.176」はDisc.16に、「演奏会用大独奏曲〔第1稿〕 S.175a」はDisc.80にそれぞれ収録。 〔14〕~〔26〕ベルリーニのオペラ「清教徒」の主題を使用し、リストを含む6人の作曲家がそれぞれ変奏を書き、リストが全体をまとめて一つの作品にしたものが通称「ヘクサメロン変奏曲」。まずその作品の出版譜(ピアノ独奏稿)にはオーケストレーションの挿入指示が書かれている。そしてこの変奏曲のピアノ協奏稿の写譜家による写譜が一部残されている(未出版)。この「オーケストレーション挿入指示」と「写譜の一部」をヒントにハワードがこのピアノ協奏稿を補筆をしつつ再現したもの。ピアノ独奏稿はDisc.51に収録。 〔27〕~〔28〕ウェーバーの「華麗なるポラッカ(ポロネーズ)」をピアノとオーケストラの協奏稿にしたもの。アドルフ・ヘンゼルトもこの作品の「演奏会用版」(独奏)を作ったが、リストはそのヘンゼルト版を称賛しこのリスト版をヘンゼルトへ献呈している。このピアノ協奏稿を再度リストがピアノ独奏へ編曲したものはDisc.79に収録。




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この記事へのコメント

1. Posted by yoshimi   October 31, 2013 12:33
こんにちは。
「へクサメロン変奏曲」は、複数作曲家の合作という珍しい企画ものの曲ですね。初めて知りました。
合作曲というと、私が知っているのはブラームスのF.A.E.ソナタくらいです。
同一主題に基づいて、作曲家がそれぞれ変奏曲を書くという点では、ディアベリ変奏曲と発想は同じですね。

リストにタールベルク、ピクシス、ヘルツ、チェルニー、そしてショパンと、たぶん当時の錚々たる作曲家が揃ってとても豪華。
行進曲が主題のせいか、似たような曲が多いような気がしないでもありませんが、特に印象的な曲は、ロマンティックなショパンの第6変奏と、リストの第2変奏、それに華やかなフィナーレでした。
ヘルツの第4変奏は、蝶が舞うようなパッセージが続くのが面白いです。

ピアノ協奏曲版が『Eugene List-the Great Piano Concerti』(VOX)に収録されているようですが、楽譜は未出版のはずなので、これも写譜を元にEugene Listが補筆したのかも?(CD自体は持っていないので未確認です)
編曲版のなかで、6台ピアノ版もあるらしく、珍しい実演映像をYoutubeで見ると、なかなか壮観でした。
2. Posted by ミッチ   November 01, 2013 01:09
こんばんは!コメントありがとうございます。

この変奏曲は貧しい人々のための資金集めのチャリティーとして企画されたものだそうです。各作曲家が依頼を受けて変奏を受け持ったという点では、おっしゃるようにディアベリ変奏曲と事情が似ていますね。

僕も個人的にはショパンの変奏が一番印象的です。他の作曲家が華やかさを競っているように聴こえる中、ショパンだけは一人遠くから冷めた目で見ているようで面白いです。

6台ピアノ版は知りませんでした。情報ありがとうございます。

ユージン・リストのCDは自分で持っていたことをすっかり忘れていました(笑)。そのCDのブックレットに掲載されている情報とハワードの情報を照らし合わせると、興味深い事実が見えてきました。

続く
3. Posted by ミッチ   November 01, 2013 01:18
ヘクサメロンのピアノ協奏曲版については僕も最近調べ始めたのでまだ全貌はわかっていないのですが、いままでの情報をまとめるとこのようになります:

【事実】
・リスト自身はヘクサメロン変奏曲のピアノ協奏曲版を演奏したことがある
・ピアノソロの出版譜にはオーケストレーション挿入指示が書かれている

【ハワードの情報】
・協奏版の不完全な写譜が残されている。これは誰が書いたものかわからないし、リストがどの程度関わったかもわからない
・この写譜はリストが実際に演奏したものとは違うものらしい

【ユージン・リストの情報】
・スコアの一部はウィーン楽友協会に保管されていて、ユージン・リストはそこから借りた
・そのスコアを再現するには、さらに手を加える必要があった
・オーケストレーターはリスト本人ではないらしい
・オーケストレーターは不明

ハワードが「写譜の一部」と言及しているものとユージン・リストがウィーン楽友協会から借り受けたものは同じものである可能性はありますね。ハワードもユージン・リストもブックレットを自身で執筆してくれていて貴重な情報が手に入りました。お二人の情報を総合すると、おそらくリスト本人による協奏版は残されていないのでしょうね。

4. Posted by yoshimi   November 01, 2013 23:35
こんばんは。
やはりユージン・リストのCDはお持ちでしたね。
同じ写譜を元にしたとしても、それぞれ手を加えているようですから、ハワードとユージンの演奏は、かなり違うのかも。
リストはピアノ協奏曲版まで手が回らなかったのか、乗り気ではなかったのか、楽譜を書かなかった理由はなぜなんでしょうね? 謎です。
楽譜情報を辿るのは、謎解きのようで面白いです。教えてくださってありがとうございました。

6台ピアノ版に関しては、すでに調べられたかもしれませんが、録音したCDが出ています。
http://www.hmv.co.jp/news/article/1304220075/
ピアニストの担当曲を見ると、一部の変奏とフィナーレでは、複数のピアニストで合奏してますね。
紹介文によると、もともとは6人のピアニストの演奏で初演される予定だったようです。
ということは、リストが一番最初に書いたのが6台ピアノ版だったということになります。
(IMSLPに楽譜がなかったので、確認できませんが)

6台ピアノ版の演奏会のライブ映像がYoutubeにありましたが、一人または複数で弾いてます。
複数の場合は、同じ旋律を合奏したり、違う旋律を弾いているように見えます。
http://www.youtube.com/watch?v=gw0iButR1-A

また、2010年のラ・フォル・ジュルネでは、現役ピアニストのペヌティエが編曲した6台ピアノ版が演奏されたそうです。
http://www.lfj.jp/lfj_report/ongakusai-2010/
5. Posted by ミッチ   November 03, 2013 03:06
リスト自身はヘクサメロンのピアノ協奏版を実際に演奏しています。ピアノパートは自分で演奏するとして楽譜はいらないのかもしれませんが、楽団員はスコアが無いと演奏できないでしょうから、一度はなんらかの形で書き起こしたのでしょうかね。そうだとしたらそのスコアは紛失したのかもしれませんね。

6台ピアノ版のCDはジャケットは見たことはあるのですが、詳しい内容まではよく見ていませんでした。まさか6台ピアノ版だったとは(笑)
情報ありがとうございます。

Youtubeのリンクもありがとうございます。ユージン・リストの協奏版がupされてるみたいなので、参考までに
http://www.youtube.com/watch?v=4-a8i0FJX6k
http://www.youtube.com/watch?v=qqMymsw5PhI

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