SVIATOSLAV RICHTER joue Franz LisztLegendary Performances Vol.1

August 28, 2010

リストコンクール

世界3大ピアノコンクールと言えばショパンコンクール、チャイコフスキーコンクール、エリザベートコンクールのことを指します。そのほかリーズコンクール、ロン=ティボーコンクールやクライバーンコンクールも有名ですね。一方リストコンクールは影が薄くあまり盛り上がっているような感じがしません。ショパンコンクールとリストコンクールを比べてみるといろいろなことが見えてきます。

・開催された理由
ショパンコンクールが開催された理由というのは「ショパンの作品をより深く理解してもらうため」だったそうです。課題曲はコンクールとしては異例の一作曲家の作品のみで構成されています。言わば「ショパンのため」のコンクールです。一方リストコンクールはブダペスト国際音楽コンクールの一部門として開催されました。僕はリストコンクールがどのような理由で開催されたかは知りませんが、「リストのため」に開催されたとは思えません。なぜならブダペスト国際音楽コンクールのピアノ部門は名前がリストコンクールになったり、リスト=バルトークコンクールになったりしています。

・課題曲
ショパンコンクール最大の特色は上でも述べましたが、課題曲がショパンの作品のみということです。リストコンクールの課題曲は通常のピアノコンクール同様にいろいろな作曲家のものが含まれていますが、もし課題曲がリストの作品のみならかなり面白いコンクールになっていたでしょう。コンクールのすべての課題曲を一作曲家でまかなえるとしたら、それはショパン以外だとリストしかいないと思います。

・注目度の分散
ショパンコンクールは世界にいくつかありますが、ショパンコンクールと聞いたら、ワルシャワで5年ごとに行われるアレと誰もが思い浮かべるでしょう。しかしリストコンクールと聞いてもおそらくピンとこない人が多いのではないでしょうか。というのもリストコンクールも世界にいくつかあり、とくにユトレヒトで行われているものは近年規模が大きくなりつつあります。しかもなんとユトレヒトの方は課題曲がリストのみです。ブダペストの影がますます薄くなる。ちなみにオグドンも「リストコンクール優勝者」と紹介される時がありますが、彼はロンドンのリストコンクールの優勝者です。

・入賞者
ショパンコンクールはアルゲリッチ、ポリーニ、ツィマーマンなどの現代を代表するピアニストを多く輩出しました。ブダペストリストコンクールも第1回の優勝者がアニー・フィッシャーという大ピアニストですが、その後は特に目立った優勝者がいません。(2位以下の入賞者だとディノ・チアーニやラザール・ベルマンがいます)

・スキャンダル
スキャンダルなんて起こそうと思って起きるものでもないので、これは仕方がないですが、スキャンダルの一つでも起きれば注目度も高まるのではないでしょうか(笑)。例えばショパンコンクールではアシュケナージの2位を不服とし審査辞退したミケランジェリやポゴレリチの予選落ちに抗議して帰ってしまうアルゲリッチの事件などがありました。チャイコフスキーコンクールではソヴィエトの威信をかけたコンクール第1回目でアメリカの無名の青年(クライバーン)に優勝されてしまいます。しかも冷戦下のさなかに。さらに第2回では自国の優勝者を出そうと政府自らが動き、脅迫まがいの事をしてアシュケナージに参加させたにもかかわらず、同時に参加していたジョン・オグドンの演奏があまりにも凄すぎて第1位を二人にしなければならなくなりました。

リストコンクールを「リストのために」「ブダペストで」「定期的に」「それなりの規模で」「毎回名前を変えず」「課題曲リスト作品のみで」「音楽コンクールの一部門としてではなく独立して」やっていたら、リストコンクールはもっと成功していたのではないかなと妄想してしまいます。


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ミッチ at 15:54│Comments(0)TrackBack(0) リストのこと 



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