ギレリス
June 07, 2011
The Art of Emil Gilels
FRANZ LISZT
Disc.1
1. ハンガリー狂詩曲 第2番 〔カデンツァ付き〕 S.244/2
2. ハンガリー狂詩曲 第9番 ペシュトの謝肉祭 S.244/9
3. ハンガリー狂詩曲 第15番 ラコッツィ行進曲 S.244/15
4. ラ・カンパネラ S.141/3
5. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1
6. ピアノソナタ S.178
Disc.2
1. スペイン狂詩曲 S.254
2. ピアノ協奏曲 第1番 S.124*
3. ハンガリー狂詩曲 第6番 S.244/6
4. パガニーニ大練習曲 第5番 狩り S.141/5
5. ハンガリー狂詩曲 第9番 ペシュトの謝肉祭 S.244/9
6. 《フィガロの結婚》による幻想曲 (モーツァルト=リスト)〔ブゾーニ編〕
*キリル・コンドラシン指揮/モスクワ放送交響楽団
BIANCO E NERO BN2432/2
Recorded: 1946-1968
〔メモ〕
ギレリスのリスト録音を2枚組にギッシリ詰め込んだCDの紹介です。ギレリスはおそらくその謙虚さ故に「自分より優れたピアニストがいる」などと事あるごとに発言していましたが、僕はそうは思いません。ソヴィエトの演奏家は政府に全てをコントロールされていたわけですが、彼の発言も言わされたものなのではと勘繰りたくなります。何が言いたいかというと、ここに収録されているモノを聴けば彼が史上最高のピアニストの一人だということは明白だということです。演奏は実に論理的で、曲の構造を明確にしています。そして疾風怒濤の超絶技巧。他に興味深い点として、カンパネラやハンガリー狂詩曲15番などでは全体的に改編をして演奏しています。
名ピアニストであるシャーンドルは、「偉大なピアニストはどんな種類の曲でも素晴らしい演奏ができる」と言ってましたが、まさにその通り。ギレリスはリストを多く取り上げているわけではないですが、他の作曲家の作品同様に彼のリスト録音も素晴らしい演奏です。
でもハンガリー狂詩曲第2番はちょっとギレリスらしくない演奏のように感じられました。
ちなみに同レーベルのCDでリヒテルのオールリスト2枚組とボレットのオールリスト2枚組があります。このBianco e NeroというレーベルはDanteやArlecchinoと同じ会社でしょう。
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス
記事一覧(サイトマップ)
June 05, 2011
Great Pianists of The 20th Century Vol.36
20世紀の偉大なるピアニストたち 36
エミール・ギレリス 3
Disc.1
1.-4. ピアノ協奏曲 第2番 Op.83 (ブラームス)<72>*
5. メロディ Op.47/3 (グリーグ)<74>
6. 小川 Op.62/4 (グリーグ)<74>
7. 孤独なさすらい人 Op.43/2 (グリーグ)<74>
8. 蝶々 Op.43/1 (グリーグ)<74>
9. 幻想曲 (連弾のための) D.940 (シューベルト)<78>"
Disc.2
1.-3. ピアノソナタ Op.34/1 (クレメンティ)<60>
4. アラベスク Op.18 (シューマン)<59>
5.-8. ピアノソナタ 第2番 葬送 Op.35 (ショパン)<61>
9.-12. ピアノソナタ 第3番 Op.58 (ショパン)<78>
13. 練習曲 第14番 Op.25/2 (ショパン)<68>
*オイゲン・ヨッフム指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
"連弾pf: エレーナ・ギレリス
音源: Deutsche Grammophon, BMG
Philips 456 799-2
〔メモ〕
ギレリスはジュリアード音楽院の学生にラフマニノフの第3コンチェルトをマスターするのにどれくらいの時間がかかったかを聞かれた時「私は15歳の時にこの曲を学び始め、いまだに学んでいる最中だ」と答えました。このことからわかるように、巨匠になってもギレリスの謙虚な姿勢は変わりませんでした。ギレリスの音楽に対する姿勢も同様で音楽解釈も誠実です。
ギレリスの師のひとりであるゲンリヒ・ネイガウスは「若きギレリスは非常に速く、非常に大きい音で演奏するのが好きだった」と証言しています。若いころの録音と比べると、これら70年代の演奏を聴くとテンポ設定は大分落ち着いています。たしかにギレリスの若き日のヴィルトゥオーゾ振りも聴衆にとっては魅力的な要素でしたが、このように落ち着いた演奏をしても音楽の魅力が減らないどころか、増しているのは彼が音楽家として素晴らしかったからでしょう。ショパンの第3ソナタは骨太ながら叙情性が素晴らしく癒される演奏です。
このディスクの中で僕が最も素晴らしいと思ったのはブラームスの第2コンチェルトです。太くて丸い音で貫かれたこの曲における理想的な演奏と言ってもいいと思います。真に感動的。
ちなみにエレーナ・ギレリスは彼の娘です。
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス
フランツ・リスト→カール・タウジヒ→アレクサンドル・ミハウォフスキ→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス
記事一覧(サイトマップ)
May 29, 2011
Great Pianists of The 20th Century Vol.35
20世紀の偉大なるピアニストたち 35
エミール・ギレリス 2
Disc.1
1.-3. 《ペトルーシュカ》からの3つの楽章 (ストラヴィンスキー)<67>
4. 追憶のソナタ Op.38/1 (メトネル)<67>
5.-7. ピアノソナタ 第8番 戦争ソナタ Op.84 (プロコフィエフ)<68>
8. 束の間の幻影 第1曲 Op.22/1 (プロコフィエフ)<68>
9. 束の間の幻影 第3曲 Op.22/3 (プロコフィエフ)<68>
10. 束の間の幻影 第5曲 Op.22/5 (プロコフィエフ)<68>
11. 束の間の幻影 第7曲 Op.22/7 (プロコフィエフ)<68>
12. 束の間の幻影 第8曲 Op.22/8 (プロコフィエフ)<68>
13. 束の間の幻影 第10曲 Op.22/10 (プロコフィエフ)<68>
14. 束の間の幻影 第11曲 Op.22/11 (プロコフィエフ)<68>
15. 束の間の幻影 第17曲 Op.22/17 (プロコフィエフ)<68>
16. ピアノソナタ 第3番 Op28 (プロコフィエフ)<71>
17. 《3つのオレンジへの恋》より行進曲 Op.33ter (プロコフィエフ)<67>
Disc.2
1. 《フィガロの結婚》による幻想曲 (モーツァルト=リスト)〔ブゾーニ編〕<35>
2. ハンガリー狂詩曲 第9番 ペシュトの謝肉祭 S.244/9 (リスト)<51>
3. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1 (リスト)<69>
4. スペイン狂詩曲 S.254 (リスト)<57>
5.-7. ピアノ協奏曲 第2番 Op.44 (チャイコフスキー)〔ジロティ編〕<72>*
8. 前奏曲 (ロ短調)(バッハ=ジロティ)<61>
*ロリン・マゼール指揮/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
音源: Czech Radio, BMG, Mezhdunarodnaya Kniga, EMI
Philips 456 769-2
〔メモ〕
まずDisc.1はお国ものであるロシアの作曲家による作品です。演奏芸術を表す形容詞としては不適切かもしれませんが、全体的に「強い」演奏です。足腰がしっかりして地に足が着いた演奏をしています。ストラヴィンスキーやメトネルももちろん素晴らしい。一番の注目はプロコフィエフではないでしょうか。彼のピアノソナタ第8番はギレリスに献呈され、ギレリスが初演もしています。ここでの演奏はプロコフィエフ特有の乾いた叙情性が素晴らしい。
そしてDisc.2ですが、リストの曲とリスト派とも言えるブゾーニ、ジロティの編曲を集めた粋なセレクションです。バッハの平均律第1巻第10番の前奏曲をジロティが編曲したものも含まれています。平均律を抒情的な小品へ編曲するという点ではバッハ=グノーの「アヴェ・マリア」のアイデアに近いですね。演奏は引き締まった美しさがあります。1933年に優勝した全ソ連コンクールではフィガロ・ファンタジーでセンセーションを巻き起こしたそうです。この録音を聴くとセンセーションが巻き起こったというのも納得できます。「パワフルな技巧」という点では、この20世紀の偉大なるピアニストたちに収録された全72人のピアニストの中でもトップクラスだと思います。しかし彼が「単なる技巧派」と目されることはありませんでした。それは彼の音楽が充実して豊かだったからでしょう。
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス
フランツ・リスト→カール・タウジヒ→アレクサンドル・ミハウォフスキ→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス
記事一覧(サイトマップ)
May 22, 2011
Great Pianists of The 20th Century Vol.34
20世紀の偉大なるピアニストたち 34
エミール・ギレリス 1
Disc.1
1. 前奏曲とフーガ BWV532 (バッハ=ブゾーニ)<68>
2.-4. ピアノ協奏曲 第27番 K.595 (モーツァルト)<73>*
5.-7. ピアノ協奏曲 第4番 Op.58 (ベートーヴェン)<57>"
Disc.2
1. フランス組曲 第5番 BWV816 (バッハ)<60>
2.-5. ピアノソナタ 第2番 Op.39 (ウェーバー)<68>
6.-8. 映像 第1集 (全曲)(ドビュッシー)<69>
9. 水の戯れ (ラヴェル)<68>
10. トッカータ (クープランの墓 第6曲)(ラヴェル)<?>
11. 道化師の朝の歌 (ラヴェル)<61>
*カール・ベーム指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
"レオポルド・ルートヴィヒ指揮/フィルハーモニア管弦楽団
音源: BMG, EMI, Deutsche Grammophon
Philips 456 793-2
〔メモ〕
ショパン直系のプーニョの弟子ヤコフ・トカーチに師事し、その後ベルタ・レイングバリトに師事したギレリスです。彼の最も重要な師はご存じの通りゲンリヒ・ネイガウスです。リヒテル同様にネイガウス派の最も偉大なピアニスト、いや、世界的に見ても最も重要なピアニストの一人だったと言えるでしょう。ギレリスは1936年にウィーン・ピアノコンクールに2位に入賞。ちなみにその時の1位はヤコフ・フリエールですが、1940年代はそのフリエールと2台ピアノで共演していました。ウィーンコンクールの2年後エリザベートコンクールの前身イザイコンクールにてギレリスは優勝しています。そしてスターリン賞やレーニン勲章も受賞しています。
演奏は骨太で堅牢な音楽作りをしています。解釈においても技巧においてもブレを全く感じません。このディスクではバロック音楽のバッハから近代音楽のラヴェルまで収録されていますが、どんな音楽においても一本筋の通った演奏です。それから論理的で見通しの良い演奏でもあります。1964年のカーネギーホールリサイタルをニューヨーク・タイムズが評しています「音楽の核というものを聴衆へ直接伝えるという彼の能力は、最高の芸術性レベルに到達している」。
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス
フランツ・リスト→カール・タウジヒ→アレクサンドル・ミハウォフスキ→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス
記事一覧(サイトマップ)