リスト作品集
January 04, 2012
horowitz plays liszt
horowitz plays liszt
Disc.1
1. コンソレーション 第2番 S.172/2 <1962>
2. ハンガリー狂詩曲 第19番 〔ホロヴィッツ編〕 S.244/19 <1962>
3. スケルツォと行進曲 〔ホロヴィッツ編〕 S.177 <1967>
4. オーベルマンの谷 S.160/6 <1966>
5. ピアノソナタ S.178 <1977>
6. 泉のほとりで S.160/4 <1975>
7. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1 <1975>
Disc.2
1. コンソレーション 第3番 S.172/3 <1979>
2. メフィストワルツ 第1番 〔ホロヴィッツ編〕 S.514 <1979>
3. バラード 第2番 S.171 <1981>
4. ウィーンの夜会 第6番 〔コーダ:ホロヴィッツ〕 S.427/6i (シューベルト=リスト) <1986>
5. ペトラルカのソネット 第104番 S.161/5 <1986>
6. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1 <1986>
7. "泣き、嘆き、憂い、おののき" 前奏曲 S.179 <1989>
8. イゾルデの愛の死 〔ホロヴィッツ編〕 S.447 (ワーグナー=リスト) <1989>
Disc.3
1. ハンガリー狂詩曲 第6番 〔ホロヴィッツ編〕 S.244/6 <1951>
2. ハンガリー狂詩曲 第2番 〔ホロヴィッツ編〕 S.244/2 <1953>
3.-5. ピアノソナタ S.178 <1949>
6. コンソレーション 第4番 S.172/4 <1950>
7. コンソレーション 第5番 S.172/5 <1950>
8. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1 <1951>
Disc.4
1. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1 <1930>
2. パガニーニ練習曲 第2番 〔ブゾーニ編〕 S.141/2 <1930>
3. ハンガリー狂詩曲 第6番 〔ホロヴィッツ編〕 S.244/6 <1947>
4. ペトラルカのソネット 第104番 S.161/5 <1951>
5. 泉のほとりで S.160/4 <1947>
6. 葬送曲 S.173/7 <1950>
7. 死の舞踏 〔ホロヴィッツ編〕 S.555 (サン-サーンス=リスト) <1942>
8. 結婚行進曲による変奏曲 (メンデルスゾーン=リスト) 〔ホロヴィッツ編〕<1946>
9. ハンガリー狂詩曲 第15番 ラーコーツィ行進曲 〔ホロヴィッツ編〕 S.244/15 <1950>
10. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1 <1951>
Sony Classical 88697839852
〔メモ〕
20世紀に生きた伝説的ピアニストであるホロヴィッツの4枚組です。19世紀に「ピアノの魔術師」と形容されたのはリストですが、20世紀においてその称号を受け継いだのはホロヴィッツです。現役時代、ホロヴィッツのリスト作品演奏は「ナルシスティックすぎる」という批判を浴びたこともあるそうなのですが、確かにその言葉は的を射た表現かもしれません。しかしホロヴィッツの演奏は圧倒的なオーラがあり、いかなる批判をもねじ伏せる力がありました。ホロヴィッツの演奏は聴いた人間を別世界に連れて行きます。それが夢の世界か地獄かは人それぞれですが、そんな状況では冷静な判断をできないのも当然で、これら演奏に対しエクスタシーを感じる人もいれば憤慨する人がいてもおかしくないでしょう。僕はこの演奏に時折り恐れすら感じます。リストを聴くというよりはホロヴィッツを聴くアルバムです。
※編曲の表記について
一般的にホロヴィッツの編曲と呼ばれるものに〔ホロヴィッツ編〕と付けましたが、バラード2番やオーベルマンなどにも改編は見られます。他の曲にも細かい改編があります。
ちなみにメフィストワルツ1番が〔リスト=ブゾーニ=ホロヴィッツ〕と表記されることがありますが、それは誤りです。確かにブゾーニ編曲のパッセージを引用してはいますが、基本的にはリストオリジナルをベースとしたホロヴィッツ編曲版です。
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August 02, 2011
Vox Legends: Kentner plays Liszt
ルイス・ケントナー
Louis Kentner plays Liszt Solo Piano Music
Disc.1
1. 詩的で宗教的な調べ S.154
2. エレジー 第2番 S.197
3. 顕現 第1番 S.155/1
4. 孤独の中の神の祝福 S.173/3
5. 灰色の雲 S.199
6. 悲しみのゴンドラⅠ S.200/1
7. バラード 第2番 S.171
8. 5つのハンガリー民謡 S.245
Disc.2
1. 《ドン・ジョヴァンニ》の回想 S.418 (モーツァルト=リスト)
2. 《さまよえるオランダ人》より紡ぎの合唱 S.440 (ワーグナー=リスト)
3. 《ルチア》と《パリジーナ》の主題による演奏会用ワルツ S.214/3 (ドニゼッティ=リスト)
4. 4つの小品 S.192/1-4
5. 《真夏の夜の夢》より結婚行進曲と妖精の踊り S.410 (メンデルスゾーン=リスト)
6. 《ファウスト》のワルツ S.407 (グノー=リスト)
VOX BOX CDX2 5503
Recorded: 1960’s-1970’s
〔メモ〕
ピアニストとしての師はリスト直系のアルノルド・セーケイで、作曲の師はゾルタン・コダーイだったケントナーです。イギリスのリスト協会の元会長でハワードの前任者だった彼ですが、さすが一曲目からなんともマニアックな作品を持ってきています。この曲は「死者の追憶」の初稿です。この曲を選んだ目の付けどころが素晴らしい。演奏は感情表現が強く、テンポの揺れがあります。曲がケントナーの特性に合えば素晴らしい効果を上げています。個人的には最も素晴らしいと思ったのは、ハンガリー民謡と4つの小品です。これら小品集でもボリューム感があり、聴き終わった後に満足感が残ります。他にも顕現やエレジーなどを取り上げ、ブレンデルなどより先にこれらリストの思索的作品の再興に取り組んでいたピアニストと言えるでしょう。リスト・ルネサンスの立役者の一人です。
ちなみにハンガリー民謡と4つの小品はなぜかトラック分けがされてません。
VoxにはいまだにCD化されていないケントナーのリスト録音が大量にあります。ハンガリー狂詩曲全集、(通称)ルーマニア狂詩曲、スペイン狂詩曲、演奏会用練習曲全集などです。早くしてください。
フランツ・リスト→イシュトヴァーン・トマーン→アルノルド・セーケイ→ルイス・ケントナー
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May 17, 2011
リスト作品集 ● ダルベルト
リスト作品集
Disc.1
1. "泣き、嘆き、憂い、おののき" バッハの動機による変奏曲 S.180
2.-4. 愛の夢 S.541 (全曲)
5. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1
6. 孤独の中の神の祝福 S.173/3
7. 葬送曲 S.173/7
Disc.2
1.-7. 巡礼の年 第2年 イタリア S.161 (全曲)
8. 夜 S.516a
DENON COCO-70985→6
Recorded: 1990/1992/1993
〔メモ〕
ヴラド・ペルルミュテールやマガロフの弟子であるダルベルトがデンオンレーベルに残したリスト集です。ダルベルトはリーズピアノコンクールで優勝したことがあります。リーズコンクール優勝と言えばルプーやペライアなどが思い浮かびますが、ダルベルト、ルプー、ペライアの3人は偶然にも(いや、偶然ではないのかな?)ピアノのリリシストという評価を得ています。ダルベルトの重要な師は上記の二人だと思いますが、他にレイモン・トルアールにも師事しています。トルアールはザウアーの弟子なのでリスト直系ピアニストと言っていいでしょう。
彼の演奏は抒情的で澄み切った美しさがあります。「美しいピアノ」と一言で言ってもいろいろあり、例えば美しいだけで説得力の無い場合もあります。ダルベルトの場合は例えば「夜」や「バッハ変奏曲」のような内容の重い傑作でも心に迫って来るような充実した演奏ができる。個人的に「夜」はダルベルトの録音が最高の名演だと思っています。ちなみにペトラルカ104番ではオッシアで演奏されてます。そして「夜」は巡礼の年第2年の第2曲の拡大編曲なのでその比較ができるという点でも素晴らしいディスクだと思います。
しかしこれらの録音、不幸にも盗用されてしまいます。...しかも2度も。1度目は韓国メロディアの企画盤「世界の偉大なるピアノ音楽」シリーズでクズミン名義で発売されたリスト録音はその多くがダルベルトのこれらの録音です。そして2度目はConcert Artistsレーベルのジョイス・ハットのCDで「夜」や「ダンテソナタ」など計4曲が盗用されました。「録音が盗用される」ということ自体滅多に起こりえないのに、2度も盗用されるとは!それだけこのダルベルトの録音が名演奏だったということでしょうか。
フランツ・リスト→アレクサンドル・ジロティ→ニキタ・マガロフ→ミシェル・ダルベルト
フランツ・リスト→エミール・ザウアー→レイモン・トルアール→ミシェル・ダルベルト
HMV: ダルベルト リスト作品集
タワレコ: ダルベルト リスト作品集
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February 16, 2011
FRANCE CLIDAT: Liszt L'œuvre pour piano
Liszt L'œuvre pour piano
Disc.1
1.-9. 巡礼の年 第1年 スイス S.160 (全曲)
巡礼の年 第2年 イタリア S.161 より
10. 婚礼
11. 物思いに沈む人
12. サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ
13. ペトラルカのソネット 第47番
14. ペトラルカのソネット 第104番
Disc.2
巡礼の年 第2年 イタリア S.161 より
1. ペトラルカのソネット 第123番
2. ダンテを読んで - ソナタ風幻想曲
3.-9. 巡礼の年 第3年 S.163 (全曲)
Disc.3
1.-3. 巡礼の年 第2年 補遺 ヴェネツィアとナポリ S.162 (全曲)
4.-5. 二つの伝説 S.175
6.-11. コンソレーション S.172 (全曲)
12. バラード 第1番 S.170
13. バラード 第2番 S.171
Disc.4
ハンガリー狂詩曲 S.244 より
1. 第1番
2. 第2番
3. 第3番
4. 第4番
5. 第5番 悲劇的な英雄の詩
6. 第6番
7. 第7番
8. 第8番
9. 第9番 ぺシュトの謝肉祭
10. 第10番
Disc.5
ハンガリー狂詩曲 S.244 より
1. 第11番
2. 第12番
3. 第13番
4. 第14番
5. 第15番 ラコッツィ行進曲
6. 第16番
7. 第17番
8. 第18番
9. 第19番 K.アーブラーニの《高貴なチャールダーシュ》による
10. スペイン狂詩曲 S.254
Disc.6
1.-10. 詩的で宗教的な調べ S.173 (全曲)
Disc.7
1. メフィストワルツ 第1番 S.514
2. メフィストワルツ 第2番 S.515
3. メフィストワルツ 第3番 S.216
4. メフィストワルツ 第4番 S.216b
5. 調性のないバガテル S.216a
6. 華麗なるマズルカ S.221
7. メフィストポルカ S.217
8.-11. 4つの忘れられたワルツ S.215
12. 華麗なるワルツ S.214/1
13. 憂鬱なワルツ S.210
Disc.8
1.-2. 2つのポロネーズ S.223
3. ゲーテ記念祭の祝祭行進曲 S.227
4. 死のチャールダーシュ S.224
5.-6. 2つのチャールダーシュ S.225
7. スケルツォと行進曲 S.177
8. 半音階的大ギャロップ S.219
9. ギャロップ S.218
10. ワルツ形式によるアルバム・リーフ S.166
11. アルバム・リーフ S.165
12. 即興ワルツ S.213
Disc.9
1.-12. 超絶技巧練習曲 S.139 (全曲)
13.-14. 2つの演奏会用練習曲 S.145
15. アブ・イラート S.143
Disc.10
1.-6. パガニーニによる大練習曲 S.141 (全曲)
7.-9. 3つの演奏会用練習曲 S.144
10.-15. 演奏会用大独奏曲 S.176
Disc.11
1.-3. 愛の夢 S.541 (全曲)
4.-6. ピアノソナタ S.178
7. 子守歌 S.174
8. 華麗なるアレグロ S.151
9. スペインの《密輸入者》による幻想ロンドー S.252
Disc.12
1.-3. ウォロナンスの落ち穂拾い S.249 (全曲)
4.-10. ハンガリーの歴史的肖像 S.205 (全曲)
11.-15. ハンガリー民謡 S.245 (全曲)
16. プスタの憂愁 S.246
17. ハンガリー的性格のピアノ小品 第2番 S.693/2
Disc.13
1.-12. クリスマスツリー S.186 (全曲)
13. 灰色の雲 S.199
14. 悲しみのゴンドラⅠ S.200/1
15. 悲しみのゴンドラⅡ S.200/2
16. R.W.- ヴェネツィア S.201
17. 葬送前奏曲 S.206/1
18. 別れ - ロシア民謡 S.251
Disc.14
1. スケルツォ S.153
2. リヨン S.156/1
3. 顕現 第1番 S.155/1
4. 顕現 第2番 S.155/2
5. 即興曲 (夜想曲) S.191
6.-10. 5つのピアノ小品 S.192
11. エレジー 第1番 S.196
12. エレジー 第2番 S.197
13. トッカータ S.197a
14. P-N夫人の回転木馬 S.214a
15. 忘れられたロマンス S.527
16. 眠られぬ夜、問いと答え S.203
17. 瞑想 S.204
18. 夢の中で - 夜想曲 S.207
19. 凶星! S.208
DECCA 476 4035
Recorded: 1968-1973
〔メモ〕
ラザール・レヴィやギレリスに師事したフランス・クリダの14枚組リスト作品集です。フィガロ紙の評論家ベルナール・ガヴォティにより彼女は「マダム・リスト」と呼ばれることになります。
この録音集は「条件を絞った」全集ということですが、その2つの条件というのはまず「パラフレーズやトランスクリプションは含まない」というもので、要するに編曲作品は含まないということなのですが、さらに「それがたとえ元々リスト作品のピアノ編曲でも」ということになってます。そういえばB.A.C.H.の幻想曲とフーガは正真正銘リストオリジナルの作品ですが、ここに収録されてないとなるとオルガン作品の編曲とみなされたということでしょうか?それを言ったら愛の夢とかペトラルカのソネットだって歌曲からの編曲作品なんだけどね(笑)。あともう1つの条件は「最終稿のみ」ということです。
大規模なリスト全集といえばグナー・ヨハンセンのものもありましたが、そちらはほとんど知られることもなかったので、このクリダによる全集はここまでいろいろな作品を収録しているのは当時としては画期的だったのではないでしょうか。多数の世界初録音を含んでいるとのことです。
演奏のほうはいまのところあまりピンときません。いや、もうすこしじっくり聴いてみたいと思います。
なおDisc.12の〔17〕はブックレットではサール番号S.241になっていますが、ハワードの全集で演奏しているS.241と別のものになっています。ハワードの全集ではS.693/2で演奏している作品といっしょで、そちらだと曲名は「ハンガリー風行進曲」になっています。
フランツ・リスト→ハンス・フォン・ビューロー→カール・H・バルト→ゲンリヒ・ネイガウス→エミール・ギレリス→フランス・クリダ
HMV : フランス・クリダ リスト作品集
タワレコ : フランス・クリダ リスト作品集
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January 20, 2011
Jorge Bolet: Liszt Piano Works
Liszt Piano Works
Disc.1
1. ハンガリー狂詩曲 第12番 S.244/12
2. 愛の夢 第3番 S.541/3
3. メフィストワルツ 第1番 S.514
4. 葬送曲 S.173/7
5. リゴレット・パラフレーズ S.434 (ヴェルディ=リスト)
6. ラ・カンパネラ S.141/3 (パガニーニ=リスト)
Disc.2
1. ます S.564 (シューベルト=リスト)
2. 水車屋と小川 S.565/2 (シューベルト=リスト)
3. どこへ? S.565/5 (シューベルト=リスト)
4. さらば! S.563/1 (ヴァイラウフ=リスト)
5. さすらい S.565/1 (シューベルト=リスト)
6. 菩提樹 S.561/7 (シューベルト=リスト)
7. 聞け、聞け、ひばりを S.558/9 (シューベルト=リスト)
8. 水に寄せて歌う S.558/2 (シューベルト=リスト)
9. 郵便馬車 S.561/4 (シューベルト=リスト)
10. わが家 S.560/3 (シューベルト=リスト)
11. 涙の賛美 S.557 (シューベルト=リスト)
12. 魔王 S.558/4 (シューベルト=リスト)
13.-16. さすらい人幻想曲 〔協奏稿〕 S.366 (シューベルト=リスト)"
Disc.3
1.-3. ピアノソナタ S.178
4. 即興ワルツ S.213
5.-7. 愛の夢 (全3曲) S.541
8. 半音階的大ギャロップ S.219
Disc.4
1.-7. 巡礼の年 第2年 イタリア (全曲) S.161
Disc.5
1.-9. 巡礼の年 第1年 スイス (全曲) S.160
Disc.6
1.-3. 巡礼の年 第2年補遺 ヴェネツィアとナポリ (全曲) S.162
4. エステ荘の噴水 S.163/4
5. 孤独の中の神の祝福 S.173/3
6. バラード 第2番 S.171
Disc.7
1.-12. 超絶技巧練習曲 (全曲) S.139
Disc.8
1.-2. 2つの演奏会用練習曲 S.145
3.-5. 3つの演奏会用練習曲 S.144
6.-11. コンソレーション (全6曲) S.172
12. ドン・ジョヴァンニの回想 S.418 (モーツァルト=リスト)
Disc.9
1. ノルマの回想 S.394 (ベルリーニ=リスト)
2. 死の舞踏 S.126ii*
3. 呪い S.121*
4. ハンガリー幻想曲 S.123*
"ゲオルク・ショルティ指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
*イヴァン・フィッシャー指揮/ロンドン交響楽団
DECCA 467 801-2
Recorded: 1978-1993
〔メモ〕
ベヒシュタインで演奏されたボレットのリスト作品集です。「機知に富み、堅苦しくないけど深刻なブレンデル」、「包容力と心洗われるような清純があるアラウ」と比較するならば「芳醇なロマンティシズムと楽観のボレット」と言えるでしょう。正直以前はブレンデル、アラウに比べるとそれほどこのボレットの録音集を好んで聴いていたわけではありません。しかし僕のボレットへの印象は年々変化してきています。
ボレットは4歳の時に姉に連れられてピアノリサイタルに行き、その時のことをこのように回想しています「その人(ピアニスト)が座っている場所が私の座りたい場所だとその時思った」。そこから彼のピアニスト人生が始まったのではないでしょうか。
1960年ハリウッドのフランツ・リストの伝記映画「わが恋は終りぬ」をご存じでしょうか?ダーク・ボガードの主演によるものですが、その映画でピアノ演奏の吹き替えを担当したのがボレットです。この映画によりボレットの名前もある程度アメリカで知られるようになりました(しかし本格的なセンセーションをもって聴衆に迎えられるのは1974年のカーネギーホールライブを待たなければいけません)。ボレットはリストの弟子に師事したこともありますので、リストとは非常に縁深いとも言えますね。
ここでのボレットはダイアモンドがはじけるようなスパークリングな演奏をする一面と美しく歌いあげる一面があり、さらに死の舞踏や呪いなどでは貴族然とした堂々たるヴィルトゥオジティを発揮しています。
フランツ・リスト→モーリッツ・ローゼンタール→ホルヘ・ボレット
フランツ・リスト→アレクサンドル・ジロティ→ホルヘ・ボレット
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December 22, 2010
ARRAU HERITAGE: LISZT
ARRAU HERITAGE: LISZT
Disc.1
1.-4. ピアノソナタ S.178
5.-8. ピアノ協奏曲 第1番 S.124*
9.-12. ピアノ協奏曲 第2番 S.125*
Disc.2
1.-12. 超絶技巧練習曲 S.139 (全12曲)
Disc.3
1. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1
6つのポーランド歌曲 S.480 (ショパン=リスト)
2. 乙女の願い
3. 春
4. 指環
5. バッカナール
6. 愛しい人
7. 家路
8. 葬送曲 S.173/7
9.-11. 孤独の中の神の祝福 S.173/3
12. バラード 第2番 S.171
Disc.4
1. 愛の夢 第3番 S.541/3
2. リゴレット・パラフレーズ S.434 (ヴェルディ=リスト)
3. エルナーニ・パラフレーズ S.432 (ヴェルディ=リスト)
4. トロヴァトーレのミゼレーレ S.433 (ヴェルディ=リスト)
5. イェルサレムのサルヴェ・マリア S.431ii (ヴェルディ=リスト)
6. 《アイーダ》 神前の踊りと二重唱 S.436 (ヴェルディ=リスト)
7. ドン・カルロの祝典の合唱と葬送行進曲 S.435 (ヴェルディ=リスト)
8. ボッカネグラの回想 S.438 (ヴェルディ=リスト)
9. メフィストワルツ 第1番 S.514
Disc.5
2つの演奏会用練習曲 S.145
1. 森のざわめき
2. 小人の踊り
3つの演奏会用練習曲 S.144
3. 悲しみ
4. レジェレッツァ
5. ため息 〔アウグステ・レンネバウムのためのカデンツァ付き〕
6.-9. ピアノソナタ S.178
Disc.6
1. エステ荘の噴水 S.163/4
2. オーベルマンの谷 S.160/6
3. ダンテを読んで ソナタ風幻想曲 S.161/7
4. ペトラルカのソネット 第104番 S.161/5
5. ペトラルカのソネット 第123番 S.161/6
6. ウィリアム・テルの聖堂 S.160/1
*サー・コリン・デイヴィス指揮/ロンドン交響楽団
Philips 473 775-2
Recorded: 1969-1989
〔メモ〕
人気も評価も非常に高い、フィリップスに残されたアラウのリスト録音全集。リスト研究家である野本由紀夫氏に「抒情性や和声感の繊細さなどに比重が移っている」「熱い思いと構成感がみごとに融合した推奨盤」と言わしめたアラウの演奏です。
特筆すべきはその表現の多彩さでしょうか。丸みを帯びそして深々とした音色により、特殊な音響空間に包まれているような感覚をおぼえます。優しい表情に満ちた包容力のある演奏であり、さらに技巧性も優れています。
全体的に素晴らしいのですが、個人的にはエステ荘の噴水、孤独の中の神の祝福、超絶技巧練習曲のいくつか、ため息、愛の夢3番などなどはベスト録音と言ってもよく、言わせてもらえるならば別次元の圧倒的な名演です。広大で深遠なその音楽に呑み込まれます。
このボックスセットは僕にとって一生の宝物です。
なおロ短調ソナタは1970年(Disc.1)のものと、1985年(Disc.5)の録音が2回収録されています。後者はスイスのラ・ショー・ド・フォンでのベートーヴェンのソナタ32番Op.111と同じレコーディングセッションで録音されたものだそうです。そして解説のトム・ディーコンによるとアラウはベートーヴェンとリストの両ソナタを同等の高みにある傑作と考えていたそうです。
フランツ・リスト→マルティン・クラウゼ→クラウディオ・アラウ
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October 28, 2010
ALFRED BRENDEL EDITION -LISZT PIANO WORKS-
アルフレート・ブレンデル
ALFRED BRENDEL EDITION -LISZT PIANO WORKS-
Disc.1
1. 葬送曲 S.173/7
2.-4. ピアノソナタ S.178
5. 灰色の雲 S.100
6. ピアノ小品 S.192/3
7. 夢の中で - 夜想曲 S207
8. R.W.- ヴェネツィア S.201
Disc.2
1.-9. 巡礼の年 第1年 スイス (全曲) S.160
10. イゾルデの愛の死 S.447 (ワーグナー=リスト)
Disc.3
1.-7. 巡礼の年 第2年 イタリア (全曲) S.161
Disc.4
2つの伝説 S.175
1. 小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
2. 波を渡るパオラの聖フランチェスコ
3. 悲しみのゴンドラⅠ S.200/1
4. 悲しみのゴンドラⅡ S.200/2
5. 王の御旗 S.185
6. スルスム・コルダ - 心を高めよ S.163/7
7. 夕べの鐘 S.186/9
8. 祈り S.173/1
Disc.5
1. エステ荘の糸杉にⅠ S.163/2
2. エステ荘の噴水 S.163/4
3. ものみな涙あり S.163/5
4. 子守歌 (まどろみの歌) S.186/7
5. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1
6. 凶星! S.208
7. 眠られぬ夜!問いと答え S.203i
8. モショニの葬送 S.194
9. 死のチャルダッシュ S.224
Disc.6
1. “泣き、嘆き、憂い、おののき” バッハの動機による変奏曲 S.180
2. 死者の追憶 S.173/4 〔ブレンデル編〕
3. B.A.C.H.の主題による幻想曲とフーガ S.529ii
4. 孤独の中の神の祝福 S.173/3
Disc.7
1.-3. ピアノ協奏曲 第1番 S.124*
4.-9. ピアノ協奏曲 第2番 S.125*
10. 死の舞踏 S.126ii*
*ベルナルト・ハイティンク指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
Philips PHCP-10300~6
recorded: 1972-1991
〔メモ〕
フランツ・リストは非常に多面的な芸術家です。そのリストのある一面だけを見て、リストを誤解する方々がいるのは仕方がないのかもしれません。各々のピアニストたちもリスト作品へのアプローチを試行錯誤しています。
上記の収録曲をご覧いただくと、ブレンデルのリスト芸術に対するピアニストとしてのアプローチは非常に特徴的であることがわかります。宗教的で思索的な作品を選び、リストの音楽の神聖さや陰影の深みを主張しているかのように感じます。20世紀に起こったリストの再評価はもちろん、バルトークやラヴェルの弁護の存在も大きかったと思いますが、このブレンデルの演奏活動がさらなるリスト再評価をもたらしたのは疑いのないことでしょう。
演奏の方は確固たる構造を目指し、職人がインスピレーションと技術で建造物を構築していくその様を見ているようです。古いヨーロッパの大聖堂をイメージし、神聖な静寂さを感じさせます。
もしブレンデルのこれら録音がなかったら僕はここまでリストに注目していなかったかもしれません。個人的にはそれほど思い入れの強い録音集です。
ちなみに現在このボックスセットは廃盤で入手困難かと思いますが、過去に
ボレットのリスト8枚組ボックス→後に9枚組で完全版ボックスセット
アラウのリスト5枚組ボックス→後に6枚組で完全版ボックスセット
という慣例がありますので、これからブレンデルのフィリップス(現デッカ)録音完全収録ボックスが発売されるのではないでしょうか。
フランツ・リスト→ベルンハルト・シュターヴェンハーゲン→ルトヴィカ・フォン・カーン→アルフレート・ブレンデル
フランツ・リスト→マルティン・クラウゼ→エトヴィン・フィッシャー→アルフレート・ブレンデル
フランツ・リスト→コンラート・アンゾルゲ→エデュアルト・エルトマン→パウル・バウムガルトナー→アルフレート・ブレンデル
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