子守歌
November 07, 2013
リストのややこしい事3 -子守歌編-
まずはこちらをお聴きください。
YouTube: ベルスーズ (Berceuse) S.174
YouTube: ヴィーゲンリート (Wiegenlied) S.198
YouTube: シュルマーリート (Schlummerlied) S.186/7
あえてタイトルは原語をカタカナで表記しました。ベルスーズはフランス語、他2つはドイツ語です。これら3曲はリストによる子守歌であり、実際そのように呼ばれることが多いです。はじめに言いたいことはこれら3曲を「子守歌」と呼ぶことは問題なく、訳語としても誤りではないということです。しかし区別がしづらいということで別の呼称で呼んではどうかという提案をしてみたいと思います。
● S.174 子守歌 (ベルスーズ)
ショパンの同名曲へのオマージュとして書かれたと言われる曲です。そのショパンの曲(Berceuse)も日本では子守歌と呼ばれていますので、この曲は「子守歌」で良いと思います。
● S.198 ゆりかごの歌 (ヴィーゲンリート)
ヴィーゲは「ゆりかご」、リートは「歌」という意味ですので、「ゆりかごで歌う歌」ですからすなわち「子守歌」となるわけですが、これはそのまま「ゆりかごの歌」でもよいのではないでしょうか。リストの伝記の執筆者である福田弥さんもこの呼称を使用しています。またこの曲を「ゆりかごの歌」と呼んでもよいと思えるもう一つの理由があります。それはこの曲がリストの交響詩「ゆりかごから墓場まで」の旋律を使用しているからです。ブラームスの有名曲にも同名の曲があります(Op.49/4)。
● S.186/7 まどろみの歌 (シュルマーリート)
曲集「クリスマスツリー S.186」のなかの一曲です。シュルマーは「眠り/仮眠」、リートは「歌」という意味です。眠りの歌ですので、「子守歌」と呼ばれるようになったのでしょうか。シューマンにも同名の曲があります(Op.124/16)。ドイツ語「シュルマー」はニュアンス的には「うとうとする」という感じですので、呼称は「まどろみの歌」でもよいのではないでしょうか。
○ 補足
S.198は「ヴィーゲンリートは訳すとゆりかごの歌なので、ゆりかごの歌と呼んでもよいのでは」と書きました。フランス語でゆりかごはベルソー(Berceau)なので、ベルスーズ(Berceuse)もゆりかごの歌というニュアンスなのかと思います。
○ その他
他にリストが書いた作品では「眠りから覚めた御子への讃歌 S.173/6」も元々我が子への子守歌として書かれたものらしいです。また他には「墓場の子守歌 S195a」という作品もありますが、これは「エレジー 第1番 S.196」の初稿なので曲種としてはエレジーですね。そしてリストの編曲作品として「ウェーバーの子守歌 S.454」などもあります。
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September 12, 2012
Liszt: Sonata / Liebestraum No.3, etc: Curzon
クリフォード・カーゾン
PIANO SONATA / LIEBESTRAUM NO.3, etc.
1.-3. ピアノソナタ S.178
4. 愛の夢 第3番 S.541/3
5. 忘れられたワルツ 第1番 S.215/1
6. 小人の踊り S.145/2
7. 子守歌 S.174
8. 即興曲 D.935/2 (シューベルト)
LONDON POCL-4514
Recorded: 1963/1971
〔メモ〕
チャールズ・レディー(シュターヴェンハーゲンの弟子)、キャスリーン・グッドソン(レシェティツキの弟子/リスト直系)、アルトゥール・シュナーベル、ワンダ・ランドフスカにピアノを師事したカーゾンのリスト集です。また彼は作曲家アルバート・ケテルビーの甥としても知られています。
カーゾンはリストとあまり縁がないような印象があるかもしれませんが、意外にも彼の初の公式録音はさすらい人幻想曲のリスト編曲版協奏稿です。
彼は生涯を通じてあがり症に悩まされていました。デッカ社へレコーディングが大変に苦痛であるという内容の手紙を送ったこともあるそうです。繊細な神経の持ち主だったのでしょうか。彼の演奏も非常にセンシティブです。作曲家が意図するものを敏感に感じ取り、それに呼応するかのような演奏をします。
子守歌の録音は当時は珍しかったと思いますが、このような名演があったのは幸運です。
フランツ・リスト→ベルンハルト・シュターヴェンハーゲン→チャールズ・レディー→クリフォード・カーゾン
フランツ・リスト→カール・タウジヒ→オスカー・ベリンジャー→キャスリーン・グッドソン→クリフォード・カーゾン
フランツ・リスト→カール・タウジヒ→アレクサンドル・ミハウォフスキ→ワンダ・ランドフスカ→クリフォード・カーゾン
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June 06, 2012
Liszt Sonata, Ballades and Polonaises: Stephen Hough
Liszt Sonata, Ballades and Polonaises
1. ポロネーズ 第1番 "憂鬱なポロネーズ" S.223/1
2. ポロネーズ 第2番 S.223/2
3. バラード 第1番 (十字軍の歌) S.170
4. バラード 第2番 S.171
5. 子守歌 〔第1稿〕 S.174i
6.-10. ピアノソナタ S.178
Hyperion CDA67085
Recorded: 1999
〔メモ〕
ヘザー・スレード=リプキン、ゴードン・グリーン(ペトリの弟子)、デリック・ウィンダム(シュナーベルの弟子)に師事し、その後ニューヨークの名門ジュリアード音楽院にて名教師アデル・マーカス(ヨゼフ・レヴィーンの弟子)と同じく名教師マーティン・カニン(サマロフの弟子)に師事した実力派ピアニストであるスティーヴン・ハフのディスクのご紹介です。
ショパンを想起させるような曲種がずらりと並んでいます。リストのショパンへの敬愛を曲から感じ取れるような気がします。以前紹介したハフのリスト集と比べると、演奏の表情は柔和になり、ピアニストとしての円熟を感じさせる演奏です。American Record Guide誌はこのディスクに対し「これは最上の録音であり、批判を寄せ付けない。ハフのピアニズムは喚情的で霊感に溢れ、技巧的にそして音色的に実直である。リスト本人が演奏したらこのような演奏になっていたのではないか、という以上の褒め言葉が思いつかない」と絶賛しています。
フランツ・リスト→コンスタンティン・シュテルンベルク→オルガ・サマロフ→マーティン・カニン→スティーヴン・ハフ
フランツ・リスト→モーリッツ・ローゼンタール→デリック・ウィンダム→スティーヴン・ハフ
関連記事: Hough : LISZT Piano Works
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