FISCHER

March 27, 2011

Great Pianists of The 20th Century Vol.26

20世紀の偉大なるピアニストたち 26

エトヴィン・フィッシャー 2

great fischer 2

Disc.1
1.-3. ピアノ協奏曲 第20番 K.466 (モーツァルト)<33>"
4.-6. ピアノ協奏曲 第5番 皇帝 Op.73 (ベートーヴェン)<51>*

Disc.2
1.-4. 即興曲 Op.90 D.899 (全曲)(シューベルト)<38>
5. 幻想曲 K.475 (モーツァルト)<41>
6.-8. ピアノソナタ 第23番 熱情 Op.57 (ベートーヴェン)<38>
9.-12. ピアノソナタ 第31番 Op.110 (ベートーヴェン)<38>

"エトヴィン・フィッシャー指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
*ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/フィルハーモニア管弦楽団

音源: EMI
Philips 456 769-2

〔メモ〕
ある日、学生だったクララ・ハスキルが友人と列車に乗っていました。クララは友人とピアニストについて語っていて、話題がエトヴィン・フィッシャーに移ったときにこう言いました。

クララ「彼は素晴らしいピアニストかもしれないけど、音符を間違え過ぎよ」

そしてその後列車を降りようとした時、一人の紳士がクララに声をかけます。

紳士「すみませんが荷物を荷台から下ろすのを手伝ってくれませんか?」

なんとその紳士はエトヴィン・フィッシャー本人でした。そしてこう続けました。

フィッシャー「この荷物はね非常に重いんだ。なぜなら間違った音符がいっぱいつまってるからね!」

偶然居合わせたフィッシャーは2人の女学生の会話を聞いていたのです。
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このエピソードを伝えているのはピアニストのタマーシュ・ヴァーシャリです。フィッシャーはこういった「出会い」に関する興味深いエピソードがたくさんあります。他にフィッシャーはある少年との出会いをこのように回想しています。

「ある日、チリ出身の少年が私のもとへやってきた。その少年は私に演奏を披露してくれるという。そして私は彼に何を演奏できるかを聞いたんだ。彼は若者らしい率直さをもってこのように答えた“何を聴きたいですか?バッハなら全て知ってます”。数分彼の演奏を聴いただけで、その7歳の少年の無比の才能に驚嘆せざるを得なかった。後にその「神童」は世界的ピアニストとなる ― そうクラウディオ・アラウだ」

この後アラウは結局、フィッシャーの師クラウゼに師事することになります。他にもフィッシャーの出会いと言えば、ブゾーニやダルベールとの出会いもあります。彼はブゾーニにその音色の秘密を聞いたり、ダルベールの第2コンチェルトを演奏した際に、ダルベール本人に称賛され家族ぐるみの付き合いに発展したりします。そして最も重要な出会いは親友フルトヴェングラーでしょう。フィッシャーとフルトヴェングラーは共に1886年生まれで、フルトヴェングラーの没年にフィッシャーは音楽活動をやめているので二人の音楽的キャリアは全く重なっていると言っていいでしょう。ここでの2人の共演によるベートーヴェンは生き生きとした名演です。

ちなみにフィッシャーはピアニストであり指揮者でもありましたが、フルトヴェングラーも同様に指揮者であり、ピアノの腕も卓越していました。そしてフルトヴェングラーはアンゾルゲの弟子であり、この共演はフランツ・リストの孫弟子同士の共演となります。

ついでにリスト関係のフィッシャーの言及をひとつ。フィッシャーは各作曲家の作品とピアニストの肉体的特性には相性があると考えていました。例えばベートーヴェンを演奏するには肉厚な手が理想であるなどです。そして「リストのテクニックというものは、横によく拡がる長い指から来ている。だからしてブゾーニとザウアーが偉大なリスト弾きたりえるのだ」と言っています。

フランツ・リスト→マルティン・クラウゼ→エトヴィン・フィッシャー
フランツ・リスト→オイゲン・ダルベール→エトヴィン・フィッシャー
(フランツ・リスト→コンラート・アンゾルゲ→ヴィルヘルム・フルトヴェングラー)


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March 21, 2011

Great Pianists of The 20th Century Vol.25

20世紀の偉大なるピアニストたち 25

エトヴィン・フィッシャー 1

great fischer 1

Disc.1
  平均律クラヴィア曲集 第1巻 より
1.-2. 前奏曲とフーガ 第4番 BWV849 (バッハ)<33/34>
3.-4. 前奏曲とフーガ 第12番 BWV857 (バッハ)<33/34>
5.-6. 前奏曲とフーガ 第14番 BWV859 (バッハ)<33/34>
7.-8. 前奏曲とフーガ 第16番 BWV861 (バッハ)<33/34>
9.-10. 前奏曲とフーガ 第20番 BWV865 (バッハ)<33/34>
11.-12. 前奏曲とフーガ 第22番 BWV867 (バッハ)<33/34>
13.-14. 前奏曲とフーガ 第23番 BWV868 (バッハ)<33/34>
15.-16. 前奏曲とフーガ 第24番 BWV869 (バッハ)<33/34>
  平均律クラヴィア曲集 第2巻 より
17.-18. 前奏曲とフーガ 第4番 BWV873 (バッハ)<35/36>
19.-20. 前奏曲とフーガ 第6番 BWV875 (バッハ)<35/36>
21.-22. 前奏曲とフーガ 第9番 BWV878 (バッハ)<35/36>
23.-24. 前奏曲とフーガ 第21番 BWV890 (バッハ)<35/36>
25.-26. 前奏曲とフーガ 第22番 BWV891 (バッハ)<35/36>

Disc.2
1.-2. 半音階的幻想曲とフーガ BWV903 (バッハ)<31>
3. 前奏曲 (幻想曲) BWV922 (バッハ)<37>
4.-5. 幻想曲とフーガ BWV904 (バッハ)<37>
6.-8. ピアノ協奏曲 第1番 BWV1052 (バッハ)<33>
9.-11. ピアノ協奏曲 第4番 BWV1055 (バッハ)<36>
12.-14. ピアノ協奏曲 第5番 BWV1056 (バッハ)<38>
15. 主、イエス・キリスト、われ汝を呼ぶ BWV639 (バッハ=ブゾーニ)<33>

音源: EMI
Philips 456 766-2

〔メモ〕
ベルリンのシュテルン音楽院にてフランツ・リストの高弟マルティン・クラウゼに師事し、その後オイゲン・ダルベールからの指導も受けたエトヴィン・フィッシャーです。エトヴィン・フィッシャーの偉業の1つであるバッハの平均律の全曲録音は史上初のものでした。当ディスクの選曲をしたのはピアニストのアルフレート・ブレンデルですが、彼はこれらいくつかの前奏曲とフーガにおけるニュアンスのコントロールを「今まで出会った演奏の中で最も驚異的」だと考えていたそうです。
クラウディオ・アラウはフィッシャーが技巧の鍛錬に重きを置かないことを批判していたこともあるそうです。たしかにメカニックという点では現在のピアニストたちに劣るかもしれません。そして当録音においては楽譜の改編があり、例えば低音部をオクターブで重ねたりしています。このようなフィッシャーの姿勢は現在では賛否両論かもしれませんが、彼の天衣無縫なピアノ演奏はかけがえのないものだと僕は思います。

フランツ・リスト→マルティン・クラウゼ→エトヴィン・フィッシャー
フランツ・リスト→オイゲン・ダルベール→エトヴィン・フィッシャー


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ミッチ at 17:36|PermalinkComments(0)TrackBack(2)