Schnabel
July 02, 2012
Great Pianists of The 20th Century Vol.89
アルトゥール・シュナーベル
Disc.1
1.-3. ピアノソナタ 第21番 ワルトシュタイン Op.53 (ベートーヴェン)<33>
4.-37. ディアベッリの主題による33の変奏曲 Op.120 (ベートーヴェン)<37>
Disc.2
1.-3. ピアノソナタ 第30番 Op.109 (ベートーヴェン)<42>
4.-6. ピアノソナタ 第32番 Op.111 (ベートーヴェン)<42>
7.-9. ピアノ協奏曲 第4番 Op.58 〔両カデンツァ:ベートーヴェン〕(ベートーヴェン)<33>*
*マルコム・サージェント指揮/ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
音源: EMI, BMG
Philips 456 961-2
〔メモ〕
19世紀にて多くの素晴らしい弟子を輩出した偉大なピアノ教師といえば、リストとレシェティツキーに代表されます。リストとレシェティツキーは二人ともチェルニー門下なのでベートーヴェン直系のピアニストと言えるでしょう。今回ご紹介するシュナーベルはレシェティツキーの弟子のひとりです。レシェティツキーは「君は決してピアニストにはならないだろう。君は音楽家なのだ」とシュナーベルへ言っています。他にシュナーベルはハンス・シュミットにも師事しています。
シュナーベルによるベートーヴェンのピアノソナタ全集の世界初録音は、エトヴィン・フィッシャーによる平均律全曲の世界初録音とともに、録音史に残る偉業と讃えられています。彼はテクニシャンではなくミスタッチも散見されますが、演奏は若々しく、そして瑞々しくフレッシュな演奏です。天翔けるベートーヴェン。
ちなみに今では信じられませんが、シュナーベルが若い頃はシューベルトのピアノ音楽はピアニスト達にほとんど取り上げられることはありませんでした。レシェティツキーがシュナーベルへシューベルトのピアノソナタを教え、シュナーベルが多く取り上げたことによりシューベルトのピアノ音楽が復権していきました。
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September 13, 2010
シュナーベルは語る -音楽家の在り方-
フランツ・リストとあまり関連がないように思われる、アルトゥール・シュナーベルがこのように語っていました
“フランツ・リストは創造的なヴィルトゥオーソでした。彼は作曲し、指揮をし、教え、執筆し、同じ世代の知性ある人たちと交わりをもっていました。今日のヴィルトゥオーソはリストとまったく異なり、作曲もしなければ、教えもせず、指揮もしないし、筆を執るようなこともありません。またお互いや他のジャンルの人と接触することもありません。飛行機のおかげで、いつでも毎日のように違った場所で聴衆の前に、いつも同じプログラムで現れることができます。芸術の仕事が一地方的なものから、地球規模で行われるようになったことについて、一度よく考えてみる必要があるでしょう。二十世紀の社会は十九世紀時代のそれとは異なっています。なかには偉大な流派のかすかな記憶につながるような最後の輝きを感じさせる人もわずかにおりますが、ほとんどの音楽家は十九世紀時代の二流の音楽家に似ているところがあります。昔の人のいう多才な性格をそなえた新しいタイプの人間も出てくる可能性があり、事実新しい、多芸多才な人物の代表的なもの、つまりいかなる音の商品も取りそろえてありますという抜け目のないセールスマンのような人もいます。”
大ピアニストがあなたに伝えたいこと 100のレッスン
千蔵八郎著
春秋社
P76より
クラシック音楽という過去の音楽(必ずしも過去ではないけど)を再現するだけの現代の演奏家には耳の痛い言葉だと思いますが、僕個人は正直言うとこの意見には賛同しかねます。指揮しない、教えもしない、執筆もしないけど素晴らしいピアニストはたくさんいるではありませんか。ピアニストがピアノに専念するというのも当たり前のように思います。ただ単に時代の流れがそうなっただけではないでしょうか。職業が細分化され、より専門的に技術の修練をするようになっただけだと思います。
ただし他のジャンルの芸術家と交流をもつべき、という意見は全くその通りだと思います。
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